第7章 沈黙の証言
夜。
廊下の照明は夜間用に落とされ、薄暗い。足音一つがやけに響く。
静寂のなか、その男は足を止めた。
手には、電子レンジで温めた小さな湯たんぽと、ハーブティーのティーバッグ。
優(……大丈夫かな、。今日はだいぶ落ち込んでた)
そう口の端で呟く声は、まるで優しい兄のようだ。
けれど、その足取りには迷いがない。
の部屋のドアの前まで来ると、ノックもせず手を伸ばす。
そのとき――
潔「ちょっと待ってください」
低く、静かな声。
振り返ると、すぐ後ろに潔と國神が立っていた。
さらに一歩遅れて、千切と凪も廊下の陰から現れる。
その立ち位置も、表情も、どこか張り詰めた空気を纏っている。
潔「……今、どこに行くつもりですか?」
優人はわずかに瞬きをし、すぐに穏やかな笑みを浮かべる。
優「……ああ、ごめん。驚かせたね。さんがちょっと疲れてたみたいだから、ハーブティーでも差し入れようかと思って。今日は午前中、動きすぎてたからさ」
國「それ……わざわざ“部屋”で渡す必要ありますか?」
千「俺たちなら、共有スペースとか、トレーニングルームで渡しますけど」
優人は少しだけ目を伏せて笑い、首を傾げるように言う。
優「……みんな、ほんとにさんのことをよく見てるんだね。優しいな」
少し間を置いて――
今度は、やんわりと声の調子を落としながら続ける。