第22章 ズルイヒト♭④-2
もっとキミが欲しい
少し苦しそうなキミに気が付きながらも、キスが止まらない。
口が開いたら、舌を絡めてキミを奪う。その呼吸まで愛しくて、逃さないとばかりに手を掴む。
愛梨ちゃんの吐息が漏れて、やっと離す。潤んだキミの瞳に、僕はどう写っているんだろう。頭では止めなきゃと思っているのに、僕の口からは全然違う言葉が出てきた。
「・・・1個だけ」
「う、うん...?」
「足りてないところがあって」
そう言った僕に、キミは一瞬不思議そうな顔をしたが、レポートの、だと言えば、あ、と小さく声を出して、暗がりでも分かるぐらい、真っ赤になった。
逃げないと決めた矢先だけど、こんな言葉でしか、まだ伝えられない僕を許して欲しい。本当は、ちゃんと気持ちを確かめてからのが良いに決まっているのに、高ぶった熱が、僕が男である事を否応なく教えてくる。
ダメなら、ちゃんと断って欲しい。
望まれない形で、繋がりたい訳じゃない。流石に研究の為とはいえ、愛梨ちゃんはそこまでお人好しじゃないのは知っている。ちゃんと芯がある子だから、僕だってここまで惹かれてる。
だから、でも、どうか、
僕を受け入れて欲しい
そんな願いを込めて、真っ直ぐに見つめる。
キミのサインを見逃さないように。
ふと、キミの手が僕に触れる。思わず声が出ちゃって、手を引っ込めようとしてるけど、ダメだよ。キミのサイン、気がついたから。
「そういうことだと、思っていい?」
頷くキミを見た。
今すぐどうにかなりたい気持ちを抑えて、キミをベッドまで運ぶ。
僕を見上げる瞳には、不安の色が見え隠れして、優しく、頬に触れる。甘えるように、僕の手に擦り寄る姿は可愛くて、また、キスをする。
今度はゆっくりと。
さっきより、愛梨ちゃんの吐息に熱を感じる。
キミに触れたくて、そっと、素肌に手を伸ばす。びくっ、と震えた愛梨ちゃんは、僕の名前を呼ぶ。
嫌なら言って。
「い、嫌じゃ、ない...」
その返答に、うん、と伝えて、またキスをする。
キミの反応が、僕をくすぐって、悪い癖が、顔を出す。