第22章 ズルイヒト♭④-2
結論から言うと、僕の理性最大のピンチ。
シャツを持ってくるの忘れたと思って、シャワーから出てこれば、ちょっと前かがみになっている愛梨ちゃん。まてまて、お尻見えそうだよ。ちょっと無防備過ぎないかい?
僕には気が付かない様子だったから、何してるんだろうと思って覗き込んだらそれはもう驚かれた。衝撃で落ちた写真立てを、ごめんと言って大慌てで拾い上げてくれた。
めちゃくちゃ焦ってる愛梨ちゃんは、多分僕を凄い意識してるんだろうってのが分かる。顔、真っ赤だもん。いつもならイタズラ心が疼く所だが、今回ばかりは僕もちょっと困る。
余裕がある振りをしてるけど、内心バクバクだ。
なるべく場の空気を笑えるものにしようとしていたら、凄い衝撃音の後、部屋の電気が消えた。
暗闇の中、あぁ、停電か、と思ったら、目の前で何かが蹲っている。
その何かは言うまでも無いが、ひゃっ...と泣きそうな声が聞こえる。
困ったとか言ってられない。思わず手を伸ばしてその肩に触れる。
震えてる彼女をぐっと引きよせて抱きしめた。
彼女に安心して欲しくて、胸の中に閉じ込めたけど、その心臓は落ち着いてくれない。愛梨ちゃんの手が、僕の身体を抱きしめる。
すっぽりと収まる彼女の身体に、思わず抱きしめ返す力が強くなる。
愛おしくて、このまま、気持ちが伝わって欲しいような気もして、ずっと抱きしめた。
雷の音が遠くなる。
愛梨ちゃんの震えも止まった所で、安心していたら、擦り寄られた。今度はキミの熱を感じてしまって、背筋になにか走る。
正直、意識していない訳じゃないんだけど、怯える女の子をどうこうしようって趣味は無いので、我慢しているのに、どこかで危険信号が鳴っている。
「愛梨ちゃん」
思わず口から出てしまった。
キミと視線が合う。
僕を下から覗き込む瞳は、何故だか、僕の理性の糸を切るのには、充分だった。
気がつけば、キミを押し倒して口付けている。
あぁ、どうしよう。
この熱を、もっと感じてしまいたい。