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ズルイヒト《寿嶺二》

第22章 ズルイヒト♭④-2





雨音と、遠くで雷が聞こえる。




微かに聞こえるシャワーの音に、意識してしまうのは許して欲しい。
そんな雑念を振り払うように、タオルで髪の毛をワシワシと拭く。僕の目線の先には、机に置いたキーケース。愛梨ちゃんが、クリスマスプレゼントに、とくれたものだ。

シックな緑色の革製品に、僕のイニシャルが書いてある。嶺二くん、鍵を良く置き忘れるって言ってたから、って僕が前言ったことを覚えててくれたみたい。
そんな些細なことも嬉しくて、玄関先に専用の鍵を引っ掛ける場所まで作った。机から拾い上げて、定位置に戻す。


そしたら、ガチャッ、とお風呂場の扉が開いてキミが顔を出した。



「お、お風呂ありが...!?」
「あれー早いねぇ」



あ、そういや上、着てないんだった。そう気がついたのは、愛梨ちゃんの反応から。
僕は身体がおっきい方じゃないけれど、流石に愛梨ちゃんよりは大きい、僕のシャツを着ている姿は、クルものがある。うーん、彼シャツ最高だなぁ。


『レイジ、なんかジジくさい』


アイアイの幻聴が聞こえたところで、いつもの調子が戻ってきた。
赤くなる愛梨ちゃんを見ていたら、なんだか悩んでた気持ちも勿体なくて、ムズムズする気持ちが芽生える。


ダメだ、さっさとお風呂に行ってしまおう。


愛梨ちゃんに、ゆっくりしてねと伝えて、脱衣所に向かった。
......のだが、うん、余計にムズムズしてしまう。



「そうだよね、乾燥機使って、って言ったもんね。ずぶ濡れだったもんね。え、じゃあ、愛梨ちゃん、今付けてないよね?」



思わず独り言が口から出た。
ゴウンゴウンと回っている乾燥機は、そんな早くに仕事を終えてくれない。



はぁ、と思わずしゃがみこんで、どうしたものかと頭を抱える。
僕、我慢出来るかな。



さっきまでの真面目な気持ちはどこへやら、煩悩まみれの僕ちんには、また甘えが出てきてしまってとても怖い。そんな僕でさえ、キミは受け入れてくれそうだから、ほんとに困る。


悩んでいたら、へくしょ!とくしゃみが出た。


また風邪をひいたら元も子もない。とりあえずシャワーだ。と熱めのお湯を浴びる。



この熱は引いてくれないかもしれない。
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