第21章 ズルイヒト♭④-1
「愛梨ちゃん」
「....嶺二くん」
「今帰り?駅まで送るよ」
少し戸惑いながらも、ありがとうと言って、隣を歩いてくれるキミ。
僕は、不自然にならないように、いつも通り話しかけた。
あの日のやり直しするみたいに。
愛梨ちゃんに、研究は...と聞かれて、思わず拳を握りしめた。
ごめんね、愛梨ちゃん、そんな言葉で縛り付けちゃって。
まだ、勇気は出ないけど、もう大丈夫だから。
僕だって、キミに伝えたいんだ。
チャンスを、くれないかな?
ドゴーン!!
びっくりした。キミと目を合わせた瞬間、突然降り出した雨。
余りの大雨に、僕と愛梨ちゃんは駅まで走り出す。
人が一大決心してる時に、なんてタイミングで降り出すんだー!.....と嘆いていたら、隣の愛梨ちゃんの肩が震える。
電車は止まり、再開の目処は無く、愛梨ちゃんは今日は家に1人だと言っている。これをチャンスとするのか、下心有り無しなのかはこの際置いといて、震えてる女の子を放ったらかしにするなんで出来ない。
ましてや、キミは、僕にとって特別なんだ。
迷ったのは一瞬で、僕の上着をキミにかけて、手を取って走り出す。
れ、嶺二くん!?と、困惑するその声を無視して、まっすぐ僕の家まで。
決してその手を、離さないように。
ビショビショな僕らを、容赦ない冷たさが襲う。
まだ状況が飲み込めていない愛梨ちゃんを玄関に置いて、僕は床が濡れるのも構わずお風呂場に直行。ボタン1つでお湯が出始めたのを確認して、バスタオルと、Tシャツを引っ張り出して玄関に戻る。
お風呂沸くから、と愛梨ちゃんを先に入れようとすれば、ものすごい勢いで断られた。一緒に入る?と冗談めかして言ったら、顔を赤くして、お風呂場へダッシュしてくれたんだけど、良かった。
伝えなかったけど、彼女の服は身体に張り付いていて、正直刺激が強くて参った。思春期の少年じゃあるまいし、今更そんな事で反応はしないけど、キミを特別だと意識してしまったから、気にしちゃうんだ。
雨に濡れたキミの姿も綺麗だなんて思って、困るったらありゃしない。
ちょっとため息をついて、濡れた服を脱ぎすてた。