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ズルイヒト《寿嶺二》

第21章 ズルイヒト♭④-1









愛梨ちゃんと距離をとるようになった。






キミは相変わらず、研究に真剣で、周りへのサポートもさり気なくて、アイアイとも楽しそうに話している。そんな姿に何故だか苛立って、思わず距離をとる。
アイアイは気付いて居ないけど、愛梨ちゃんは、僕の方を見て、ちょっと困った様子なのが分かる。



それでも、僕はキミに近づかない。



もし、キミが先輩の告白を受け入れてたらどうしよう。多分、そんなことはないと思うんだけど、確かめた訳では無いし、それでも、キミは、変わらずいてくれるかもしれない。でも、それじゃダメなんだ。


キミを、僕のエゴで縛り付けちゃダメだ。


これ以上、キミの優しさを利用しちゃいけない。その決意を固めるのには、時間がかかりすぎる。だって、キミのことを知ってしまったから。









「おっす寿」
「...あれ?先輩、どうしたの?」


正直、今会いたくない人ほど会ってしまうのは、何故なんだろうね。
机に向かって書き物をしていたら、後ろから羽交い締めにされて呼吸が苦しくなる。


「ちょ!先輩、ギブ、ギブギブ...!!」
「うるせー寝癖バカ」
「今日はちゃんとセットしてますぅぅ...!」


ふんっ、と解放されれば、本気でされた訳では無いとはいえ、多少咳き込む。突然何何~?と聞けば、今度はチョップされた。流石にやられっぱなしは気が済まないので、白刃取りすれば、ぐぬぬ...と悔しがられた。
周りからは、またじゃれ合ってると思われそうだが、多分、あれだ。


八つ当たりされてる。という事は、そういう事なんだろう。


心のどこかでほっとした自分に、先輩は気がついたのか、ため息をついて、逃げんなよ、と一言伝えて、去った行った。






痛いところをつかれた。





きっと、愛梨ちゃんを見ている先輩だから、気がついたんだと思う。そう思うと、悔しいような気持ちもあるが、でも、そうなんだから仕方ない。やはり、先輩が羨ましい。僕にはあの強さが無い。


そんな自分が今まで嫌いじゃ無かったけど、今回ばかりはダメなのかもしれない。大切なものには、ちゃんと向き合わなきゃいけないんだね。





そっと、窓の方を見た。




もうかなり暗くなっている。

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