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ズルイヒト《寿嶺二》

第21章 ズルイヒト♭④-1









「寿って、水野と、付き合ってんの?」











そう聞いてきたのは、同じ研究室の、先輩。




思わず作業の手が一瞬止まったが、何事も無かったかのように続ける。


「えー、なんでですか?」
「いや、なんでって、その...」


お前ら、最近よく一緒にいるじゃん...と、ブツブツ言っている彼の態度で、薄々感じていたけど確信した。
この先輩は、愛梨ちゃんに気がある。だから、僕に話しかけてきたんだろう。


「お前、この間違う学部の奴と、飲み会後消えたじゃん?....そっち方面に」
「やだなー?見間違いじゃ無いですー?」


彼が言うのは、先日の違う学部の飲み会に参加させられた時のことだろう。


僕ちん、かなり顔が広い方だと思うんだけど、たまに交流会の名のもとに呼び出される事がある。こんなことを言うとアレなんだけど、多分僕に好意がある女の子が、僕を夜の繁華街に連れ出そうと、酔ったフリしてたっぽいんだよねぇ。タクシーに押し込んで帰って貰ったけれど。


きっと、その事を言われてるんだと思うけど、流石にその子の名誉の為にも、あえて触れないでおく。



「.....いや、まぁ、それはいいや。水野と、付き合ってるんじゃ、無いんだよな?」
「あははー、ご想像にお任せしまーす」
「ったく....お前ってほんとに...」
「なになに?可愛い後輩だなぁって?いや~照れちゃうなぁ」



ほんとにな!そう言って頭をワシワシされた。ぎゃー!僕ちんの2時間かけたセットがー!寝癖付いてんぞ。のやり取り。
この先輩とは仲良いと思う。彼も彼で、分け隔てなく色んな人と喋るタイプで、人気はある方だろう。それでいて、多分聡い人だ。


変なこと聞いたな、とそのまま退散してくれたが、その足で誰かを探している様子だ。なんとなく、彼女を探してるんだろうと思った。




『付き合ってんの?』





そう、見えるんだろうな。だって、僕はそう言う風に、振舞っているんだもん。

ただ、言葉にしたことは無い。 愛梨ちゃんは僕の行動を「研究の為」だと思っているから。僕は勝てない勝負はしない。


だから、キミからその言葉を紡ぐまでは。
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