第20章 ズルイヒト♭③
ぱちくり
目が覚めたら、なんだか柔らかい何かを抱きしめている。その何かは無邪気な顔で寝息をたてていて、ほっとした。
すっかり安心しきって寝たせいか、怠さは大分減っている。うーん、癒し効果絶大だなぁ。
周りはすっかり暗くなっていた。冬の夜は長いが、今何時だろうと、起こさないように身体を動かして、携帯を取る。
ついでに、愛梨ちゃんの寝顔を観察する。思わず写真を撮りたくなったが、アイアイからの連絡を見て止めといた。
『謹賀新年。だけど、浮かれて変なこと、しないように』
監視カメラでも付いてるんだろうか。たまに見張られてるんじゃないかと思うことがある。たはは...と苦笑いして、目に焼き付けておこうと肘を付いて横になる。
愛梨ちゃんが、んっ...と声を漏らして身震いした。
あ、寒かったかな?布団をかけ直したら、その手が伸びてきて、僕の服を掴んだ。おや。と思えば、ゆるゆると目が開いて、ボーッとこちらを見ている。
貴重な寝ぼけ顔に、声をかけずに待ってみたら、れいじくん?と、舌足らずに名前を呼ばれた。まだ、寝ぼけた様子のキミが可愛くて、笑顔が零れる。
返事をすれば、夢でも見てたんだろうか、僕が遠い存在みたいなことを言い出したから、ここに居ることを教えたくて抱きしめた。
見れなかった僕の代わりに、キミの初夢が、僕であったら嬉しいなぁ。そんな風に思っていたら、ぎゅ~って抱きしめられた。
えぇ~??何この子、可愛い過ぎるんですけど??
普段、キミから来ることなんてないから嬉しくて嬉しくて更に抱きしめた。
そしたら、ようやくキミは覚醒してきたのか、僕と目が合う。みるみるうちに開かれてく瞳と赤くなる顔に吹きそうになった。
「!?!?」
「あ、起きた?おはよう~。と言っても、もう暗くなってるんだけどね」
「ご、ごめんなさい!!!」
「あら残念」
飛び起きて離れてしまった愛梨ちゃんと一緒に、僕も起き上がる。
それはもうゆでダコかな?ってぐらい顔が赤くて焦りまくってる愛梨ちゃんに、追い討ちをかけるようにおでこをくっつけたら、ゆでダコが更に茹で上がっちゃったみたいで、笑っちゃった。
うん、可愛いなぁ。