第20章 ズルイヒト♭③
裸エプロンのサービス付き愛梨ちゃんを想像して、頭を横に振る。いかんいかん。純粋にお見舞いに来てくれた子に、なんて妄想を。そういうお年頃なので許して欲しい。お鍋を持った愛梨ちゃんがやって来た。
でも、ちょっとぐらい甘えても良いよね?
口をパカッと開けて、待ってみる。ピタッと動きが止まった愛梨ちゃんだが、恐る恐るスプーンを運んでくれる。いわゆるアーンを催促したのだが、それはそれは丁寧に、ちょっと恥ずかしそうにしてくれてる愛梨ちゃんに満足して、ペロリと平らげた。
ランランありがとう。色々ご馳走様でーす。
「ご馳走様でしたー」
「うん、片付けてくるね」
愛梨ちゃんが、キッチンに向かった所で体温を測り直す。咳こそ出てはいないけれど、また熱が上がってきたように思う。案の定、また怠さが増してきた身体に、これ以上心配かけられないと笑って誤魔化したら、愛梨ちゃんに叱られた。
あんまり大きい声を聞いた事がないから、ちょっとびっくりしちゃったけど、テキパキ動いて看病してくれるキミの姿は、いつも研究に向かってる真剣な姿そのもので、それだけ僕の事を考えてくれてるんだと思って、嬉しくなっちゃった。
そういう芯がある所にも惹かれてるから、思うがままを口にしたら顔が真っ赤になったキミ。あー可愛い。本当に可愛い。ちょっとボーッとしてた身体は、考えることを放棄してくる。
キミに触れたくて、その手に擦り寄れば、ひんやりとして気持ち良い。そのまま瞳を開けば、愛梨ちゃんの顔が見える。いつも目が合うと、赤くなって見つめてるのに、今日は違った。
なんだか、ぶるっと身体が震えて、思わず寒い...と呟けば、ちょっと困った様な愛梨ちゃん。キミの身体を手繰り寄せれば「わっ!?」と焦る声が聞こえた気がしたが、手にした温もりを手放せない。
僕の名前を呼ぶ声がする。
キミの声は、心地よくてもっと聞いていたくなる。
離れて欲しくなくて、愛梨ちゃんに傍にいて欲しいとお願いしたら頷いてくれたので、布団を捲る。
僕の意図を汲み取ってくれたのか、恐る恐る布団に入って来てくれる愛梨ちゃん。温もりが近くなって、力いっぱい抱きしめた。
凄く落ち着く。
そのまま意識を手放した。