第19章 ズルイヒト♭②
彼らに適当に話しかけるついでに、さらっと手を離した。
別に悪いことはしてないんだけど、さっきのドキドキのせいで、思わず手を離してしまった。愛梨ちゃんはどう思っただろう。
それを確かめる事は出来ないまま、Wデートが食べ歩きで終わらないように、園の中を巡る。また2人になるチャンスを伺いながら。
全てのエリアを回ると、辺りは結構暗くなる。
女性陣が御手洗に向かったところで、ミューちゃんに声を掛けた。
「ちょっとそこのお兄さんや。折角だから、彼女さんと2人っきりになりたいと思いませんか?思いますよねぇ!てな事で、パレードの間は、お邪魔虫は消えようと思いマッス!なーんて気の利く友達なんでしょ~!」
「・・・貴様、何を考えている」
「いやいや、言ったまんま!パレード終わる頃に、この辺で待ち合わせってことでどう?」
「構わんが、借りを作ったとは思わんぞ」
モチのロン!そう返事した所で、お待たせ~!と愛梨ちゃん達が戻ってきた。おかえり~と、迎えたところで、パレード見てお開きにしようかの提案に、2人とも同意してくれた。
遊園地の目玉ともあって、すごい人混みだ。
キラキラ輝くパレードに、ハロウィンならではの扮装と色とりどりの空間は、これでもかと言うほど、非日常の楽しさを教えてくれる。
もちろん、横から眺めるパレードも最高なんだけど、ミューちゃんに目配せしたら、目が合った。それを合図に、僕は愛梨ちゃんの手を取って、走り出す。
焦る愛梨ちゃんを引っ張って、目的の場所である観覧車へ乗り込む。知る人ぞ知る、パレード絶景穴場スポットの1つらしい。ミューちゃんに教えて貰ったんだ。帰りにスイーツ奢りと引き換えなんだけど。
初めは戸惑っていた愛梨ちゃんも、観覧車が上に行くに連れて、パレードが綺麗にハートになってるのに気がついて、喜んでくれた。
実はこの観覧車、パレードの時限定でジンクスがある。
頂上でキスをしたカップルは、幸せになれる。
ありがちなやつではあるが、ふと思い出して、愛梨ちゃんを見る。
彼女の瞳はパレードに釘付けだ。
さっきまで、僕のことばかり見ていたのに。
その口からは、僕じゃない男の名前が紡がれる。