第19章 ズルイヒト♭②
それはもう、色んな研究が捗っちゃって。
課題はもちろんなんだけど、単純に「個人的な研究」の方も、それはそれは楽しく進んでる。
一緒に帰れる時は帰るし、毎日連絡は取り合って、その度に、緊張しながら僕の名前を呼ぶ愛梨ちゃん。
罰ゲームって言葉が効いたのか、決して名前を間違えないように、ぎこちなくも必死で呼んでくれてる。
その姿が可愛くてわざと話しかけるんだけど、その度に、アイアイは変な顔でこっちを見てくる。
何か言いたげな彼をスルーして、愛梨ちゃんとたくさん居るようにした。
なるべく2人っきりになろうと、帰りは送るよと愛車まで案内したら『く、靴は脱いだ方が良いですか....?』って、僕が大事にしてるって話したから、ちょっと変わった気遣いが、嬉しくて可愛くて、また大笑いしちゃった。
いちいちツボに来ちゃうんだよなぁ。
どうしたらもっとキミを知れるんだろう。ちょっと遠出してみようか。
聞けば、あんまり男っ気の無い生活だったみたいだら、2人っきりだと警戒されるかもしれない。少し悩んで、僕を甘くないスイーツと例えた彼を思い出した。
どうやら、愛梨ちゃんの友人と彼は恋仲らしい。世間は狭いなぁ。せっかくだから2人にあやかってみよう。
と、僕の判断は間違って無かったらしく、旅行の話したら物凄く驚かれた。でも、キミの友達も一緒にって言ったら、安心してくれたみたい。簡単に信用はされてないだろうけど、それぐらいが丁度良い。
まだ確かな気持ちも、関係性もないんだから。
一緒に居られる時間が出来て嬉しいのと、せっかくのお出かけなのになぁ、ってどこかそんな気持ちが、つい口から零れちゃった。
愛梨ちゃんには聞こえて無かったみたい。
それでも完全プライベートな時間を過ごせることが決まったから、ワクワクしながら車を走らせる。
周りの迷惑にならない程度に、ゆっくりと。
彼女も同じ気持ちでいてくれたら、嬉しいな。
窓越しに映る、愛梨ちゃんの姿を横目に、自然と笑顔が零れていた。