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ズルイヒト《寿嶺二》

第18章 ズルイヒト♭①













それは僕にとって、初めてでは無かったけれど

































同じ研究室の水野愛梨さん。






名前は知ってたし、会話もした事あるけど、率先して、話しかけるような存在では無かった。

僕の中の彼女のイメージは、大人しくて、あまり前に出ないタイプ。

アイアイ程では無いけど、この研究室のメンバーの中で優秀な部類に入る彼女は、毎日朝早くから研究室にきて、部屋の掃除や、たまにちょっとした差し入れをしてる。裏方作業って言えばいいのかな。そういうのを、積極的にしてる感じ。

教授曰く、息子の嫁にしたい子、らしい。飲み会の席でそんなことを言っていた。息子さん、まだ小学生だったような気がしたんだけど。

滅多に人を褒めないアイアイが、彼女の論文だけやたら話題に出すから、印象に残ってたのかもしれない。




認識が変わるきっかけだったのは、あの日だと思う。





研究課題の提出日。



眉をこれでもか!と下げて、泣きそうな顔で探し物をしていた彼女が気になって、声をかけた。いつも、周りをさり気なく手伝っている彼女は、どうやら人に頼るのが苦手みたい。

実は僕ちん、彼女の資料や考察にお世話になっていたりする。
色々行き詰まると、彼女の論文をちょ~っち拝借して.....いやいや、参考だ。参考にしているので!今回は日頃のお礼も兼ねて、捜し物に奔走してみた。
断じて後ろめたいとか、そんなんじゃない。


こういう時の勘は働く方だし、わりとあっさり見つけられた。
一応、見つからなかった時の為の保険もかけといたけど、物を見せた時の彼女は目をまん丸にして驚いていた。慌てて教授の所へ行った彼女の荷物は、まだ研究室に置きっぱなしだ。


アイアイも居てくれるみたいだし、彼女の帰りを待つことにした。


「いやー、アイアイありがと!さっすが、持つべきものは心友」
「別にいいけど、珍しいね。レイジがここまでするなんて」
「....そうかな?」
「うん、いつもなら面倒がりそうなのに」
「僕ちんは困ってる人はほっとけない、ヒーローなのさ!」





はいはい。とアイアイのいつものテキトーな返事に反応して、言われてみればそうかもしれない、と思っていた。
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