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ズルイヒト《寿嶺二》

第17章 ズルイヒト♮⑤





到着したのは綺麗な浜辺。



ちょっと歩こうよ、と誘われて後をついていく。夕日が海に反射して、凄く眩しい。目を細めれば、嶺二くんの姿が見えなくなりそうで、必死で追いかけた。




「れ、嶺二くん!」
「うん?」
「あの、れ、嶺二くんに、話したいことがあって...」




そう伝えれば、ピタッと歩みを止めて、振り返ってくれた。
海に反射する光が眩しくて、その表情はよく分からない。
けど、ちゃんと伝えなきゃ。





「あ、あのね...この間、家の都合で、その....お見合いがあったの」
「...うん」

「その...む、昔の知り合いの子で、色々あって、会うようになったんだけど、あの、その子も私も、結婚するつもりとかなくて...」
「そうなんだ。なんだか仲良さそうだったけど」

「そっ、それは、その...ちょっと相談に乗ってただけで....」
「ふ~ん。僕も相談に乗って貰ってたし、愛梨ちゃんは大変だね」

「っ....ぜ、全然、大変じゃないよ...」






夕日のせいで、やっぱり表情は見辛いけど、彼の瞳が、酷く揺れている。
胸が痛い。そしたら凄く辛そうな嶺二くんが、ごめん。そう言った。





「・・・やっぱりダメだな。ほんとに。」





そう言って、髪をぐしゃっとした彼は、泣きそうな、顔をしている。
手を伸ばせば届く距離だけど、彼の手を取って良いか分からない。





「...愛梨ちゃん」
「...はい」
「僕ね、すっごく、卑怯なんだ」
「ひ、卑怯...?」
「うん、すっごく臆病で、すっごく卑怯者」




ふふっと、泣きそうな顔のまま、笑っている。




「.....アイアイから、聞いてたんだ。結婚の話は、勘違いなんだって」
「う、うん...」
「でも、本当にその時が来たら、僕は耐えられるかなって」
「え....?」





「僕ね、僕のことを好きって言ってくれる子なら、誰でも良いやって、思ってる時期もあったんだ」


そう言って、ゆっくりと夕日を見つめている嶺二くん。
その横顔は寂しそうで、思わず手を伸ばしかける。




「だから、愛梨ちゃんとも、僕に好意を寄せてくれてる子だから、仲良くしようかなって、そんな下心しか無くて」






そんなもの、あったって良いんだよ

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