第2章 ズルイヒト②-1
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「告白されたぁ!?」
「こここ声が大きいよ...!」
和菓子屋にしては珍しい、飲食スペースの一角で、響く声。
彼女とは高校からの仲で、私の数少ない友人。
ケーキ屋さんの娘だと言う彼女は、和菓子屋の娘として生まれた私と、境遇が似てて仲良くなった。
パティシエ見習いの彼女とは、お互いの実家でお茶しながら過ごすのが定番だが、今日は私の家の、新作の試食会という名の下、集まった。
集まったと表現する原因は、友人の隣で、優雅に和三盆を食べているこの男性。友人の彼氏さんで、新作会にはいつも付いてくる。
「騒がしい。静かに出来ぬのか」
「ごご、ごめんなさい」
「なんで愛梨が謝るの!いいの、甘味馬鹿はほっといて」
「誰のことを言っている」
「これも食べて良いから黙ってて」
と、友人がお皿を目の前に出すと、うむ。と言って大人しく食べている。
いつもながら、仲良しだなぁと見ていると、友人が一息吐いて、こちらに向き直す。
「それで、誰に告白されたの?やっぱり寿くん?」
「ち、違うよ!そんな、まさか!」
「じゃあ誰に?美風くん??」
「えっと、学部の、先輩...」
「ダークホースだなぁ...それで、どうするの?」
「うん...断ったよ」
「そっか、断ったんだ」
「うん」
「そっか...」
そこまで喋って、会話が止まってしまう。えへへ、と笑って、緑茶に手を伸ばす。ちょっと温くなった温度が、身体に沁みる。友人もお茶を一口のんで、うーん、と唸っている。
「彼奴は、貴様には荷が重いように思うがな」
「こら!言い方!」
「わ、分かってます...」
そう、友人(と、多分彼氏さんも)が心配をしてくれているのは分かっている。
なんせ、寿くんは、モテる。経験豊富...な人だと思う。
軒並み美人と評判の女の子がお相手だ、との話も聞くし、その...軽い関係も、噂では...。余り人と関わらない私でも、話を聞くぐらいなのだから、そうなんだと思う。
私みたいに恋愛初心者どころか、好きな人ができたことも無い人間とは、雲泥の差があるだろう。
だが、友人達が心配する原因はこれだけではない。