第16章 ズルイヒト♮④-2
「な、な、ななんでそんな事...!?」
「さっき、水野さんが結婚するって聞いたから」
「そそそそ、それは誤解でして、その、と、言うか、な、何故嶺二くん...!?」
「・・・なんとなく」
美風くんにしては、歯切れの悪い返事。
けれど、その返答を気にするには、余裕が無さ過ぎた。
「まぁ、違うなら違うで良いんだけど...ねぇ、水野さん、それ、大丈夫?」
「え?....きゃ、きゃー!」
指をさされて見れば、何故か滴っている私の携帯。
周りも、私の叫び声に何事か、とこちらを見ている。
蓋をしていたはずの水筒が、ぱっくりと口を開けて倒れている。
慌てていて、さっき拭いた時に、零してしまったようだ。
そして、何度押しても電源の付かない、携帯。
「えー!水野さん大丈夫?」
「ど、どうしよう...壊れちゃった..」
「変な所に水が入ったんだね。これ、修理するか、買い替えじゃないと無理だと思う」
「そ、そっか...修理って、どれぐらいかかるかな...」
「値段はともかく、日にちは2.3日ぐらいじゃない?」
「じゃあその間、携帯無し!?マジかー!タイミング悪いねぇ」
「タイミング...?」
「明日から、研修会だからね。水野さんもメンバーでしょ」
それを聞いて青ざめる。
そうだった。教授の研究発表会に、代表者4名がついて行って、1泊2日で研修に参加するのだ。ちなみに、代表者は美風くんと私と、例の彼女と別の男の子だ。
ほんとに、なんてタイミングなんだ。
これでは連絡を取ろうにも、何も出来ないではないか。今日は帰る約束もしていないし、かと言って、代替え機を貰いに行こうにも、この時間ではお店はやっていない。困った。
「あ、じゃあ、私、研修会の間、水野さんと一緒にいるよ!元々メンバーだし、なんかあったら伝えられるじゃん!」
「う、あ、そ、そんなご迷惑かける訳には...」
「いいって!....勘違いで迷惑かけちゃったし、お詫びだと思ってこれぐらいさせて!」
そう行って、コソッとごめんねのポーズを取る彼女。
確かに連絡の取りようが無いのは、流石に困る。ご、ごめんね、ありがとう。と返事すれば、大船にのったつもりで任せて!と笑ってくれた。
明日の待ち合わせ場所と時間を確認して、帰り支度をする