第15章 ズルイヒト♮④-1
感謝の言葉を述べられて、真斗くんとお別れした後、愛梨、と母に声をかけられた。
「あんたが真斗さんと話してる間に、来たわよ、取り置きの子」
「あ、そうなんだ」
「なんかあなた達のこと暫く気にしてたから、声掛けますか?って聞いたんだけど、大丈夫です、お礼言っといてください。だって」
「うん、分かった。ありがとう」
そうか、彼女、来ていたのか。ふと携帯を見れば、件の彼女から通知が来ていた。
『お菓子ありがとう!
邪魔しちゃ悪いから、声掛けないでごめんね!
色々ご馳走様様です♪お幸せに!』
・・・・お菓子のお礼にしては、なんだか引っかかる文章。
「....お、お母さん、あの、真斗くんとの会話って、その...聞こえてた?」
「えー?忙しかったし、あんまり覚えてないわよ~。でも余程のことじゃないと、聞こえないと思うけど?」
そうだよね
そう返事して、手伝いに戻る。
ジリジリとした不安を感じながら。
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翌日、研究室へやって来た私を見て、研究室の女性メンバー達が駆け寄ってきた。水野さん!と複数人に囲まれた私は、へぁ?と慣れない状況に戸惑う。
「驚いたよ!いつの間に!話してくれても良いじゃん!」
「な、なな、何のこと...?」
「やだ~!恥ずかしがっちゃって!式には呼んでよ~!」
「し、式???」
まさか...と、少し離れた所にいる、彼女の、姿が見える。
「水野さん、結婚するんでしょ?」
「おめでとう!」
バサバサバサ
何かが大量に落ちる音がした。
振り返れば、扉の所に、印刷物を抱えた嶺二くんと、美風くんの姿が見える
その顔は、私からでは見えない。
レイジ、なにやってるの。
寿くん、大丈夫!?
と、周りから声をかけられて、ハッとした彼は、めんごめんご~!教授に頼まれちゃって~!と、拾い集めている。周りの協力もあって、すぐに終わったが、私の話題を否定する間もなく、教授がやって来た。
今日は月イチのディスカッションなので、そのまま席に付いて始まってしまう。
すぐにでも否定したい私の気持ちは、教授の長話によって中々発散されることは無かった。