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ズルイヒト《寿嶺二》

第15章 ズルイヒト♮④-1



冬の寒さもすっかり過ぎ去った頃。


嶺二くんとの休みは中々合わず、一緒にいる時間が前より減ってしまっていた。それでも、一緒に帰れる日は送ってくれるし、毎日メールやらなんやらで、やり取りはしている。


そんな本日は、実家の新作商品発売日。


以前、おばあちゃんに買って行きたい、と行っていた彼女に、取り置いていた商品を渡すことになった。彼女が店まで取りに来てくれるとの事なので、今日は私もお店の手伝いをしながら彼女を待っていた。

中々人気のシリーズなので、来て下さる方のほとんどが、新作を購入して行ってくれる。取り置きをしておいて正解だったなぁと、別で分けておいた物を見ていたら、いらっしゃいませ、と声が聞こえて前を見る。


するとそこには見覚えのある人の姿。




「真斗くん」
「こんにちは、愛梨さん」




真斗くんに気づいた母が、あらあらまぁまぁ!聖川様のところの!と、声を荒らげて挨拶している。あらやだ、今日でしたっけ?新作のお渡し、と焦っていたが、いえ、愛梨さんに会いに来たのです。と真斗くんが言うものだから、あらあらまぁまぁ!!!と、3割増しの大声である。



先日のお見合いの時、また真斗くんと会う約束をしたことを告げると、どんな弱味握ったの、と失礼な両親なのだが、言える範囲で事情を説明したら、分かってくれた。理解のある母ではあるが、色恋話に疎かった私に、異性の仲良しが出来たことが嬉しいらしい。

嶺二くんとの事は何も伝えてない分、真斗くんの存在が、母には喜びの対象なのであろう。そんなこんなで、あんた、手伝いはいいから、真斗くんの相手をしておいで、と送り出された。

知り合いの取り置きの件をお願いして、真斗くんと奥の飲食スペースでお茶をする。




「どうやら気を遣わせてしまったようで、申し訳ありません」
「ううん、全然大丈夫だよ!今日はどうしたの?」
「実は、以前頂いたアドバイス通りに、彼女を逢瀬にお誘いしたら、とても喜んで貰えまして」
「わぁ!それは良かった!」
「それで...その、次会えた時に、正式に交際を申し込もうと思っています」




ちょっと照れくさそうな、でも少し不安そうな彼の姿に、思わず手に力が入る。聞けば、彼女さんの好きな物、人柄、今までの接し方など、多分お互いに想いあっているのでは思っている。

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