第12章 ズルイヒト♮②-1
「水野さん!これ美味しいよ!良かったら食べて?」
「あ、ありがとう」
「ううん!どういたしまして!お酒足りてる?皆も注文あったら教えて~!」
ニコニコと私にも取り分けたお皿をくれる。お腹はいっぱいになってきたが、せっかくなのでと受け取ってちびちび食べる。それでも中々入らないので、お手洗いに行こうと席を立つ。
あ、私も~!水野さん、一緒にいこ?と、言われて、う、うん、と一緒に席を離れる。お手洗い道中、何か話した方が良いのかな...と悩んでいたら、あちらから話しかけてくれた。
「うーん、中々ガードが固いよねぇ。美風くんって」
「へ?う、うん...み、美風くん、あんまり飲み会とか来ないよね...」
「そうなの!いっつも研究の話しかしないし、ちょっと仲良くしたいな~って話しかけたら、用が無いならもう帰っていい?って、冷たいしさぁ!」
「そ、そうなんだ」
「すっごい顔が良いけど、あれは鑑賞用だなぁ」
「か、かんしょう...」
「本当は寿くんと一緒のグループが良かったんだけど」
その名前を聞いて、ドキッとする。
まぁ、こればっかりは仕方ないかー、と化粧直しをしている彼女は、さっきまで、飲みすぎちゃった~、と言っていた彼女だろうか。
ちょっと呆気に取られながら、手を洗ってハンカチで拭く。何度も鏡をチェックする彼女から、ねぇねぇ、と言葉が飛んできた。
「な、何でしょう...?」
「水野さんってさ、美風くんと仲良いよね?」
「う、うーん?わ、悪いとは思わないけれど...」
「どうやって仲良くなったの?美風くんの好きなものとか知ってる?」
「え、い、いや、グループずっと一緒だから、話す機会多かったの、かも...?」
「じゃあ、これからが勝負か。美風くんと仲良く出来たら、寿くんまでもう少しだな」
「ぇ...」
「美風くんと寿くんって仲良いじゃん。最近水野さんもよく一緒に居るから、どっちかと付き合ってるのかと思って」
「え!い、いや、研究の協力してもらってて....」
胸が、ドキドキする。
これは、多分良い意味では無い。
あぁ、そうか。
そう言って、彼女はリップを塗り直す。
「研究の為じゃ無かったら、一緒にいるわけないか」