第12章 ズルイヒト♮②-1
「で?おめでとう、ってことでイイの?」
回転式の椅子に座り、足と腕を組んで、こちらを向いている美風くん。
グループ研究の為、美風くんの隣にいるのだが、何故だろう、私も同じ高さの椅子に座っているのに、まるで正座している気分になる。嶺二くんは研究室に着いて早々、教授に呼び出されてここにはいない。
「え、えっと...そ、それは、どの部分に対してでしょうか...?」
「流石にレイジの浮かれようみたら、2人がくっついたんだと思ったんだけど、まさか違うの?」
「なんと言いますかその...えっと...」
物理的にくっつきましたが、関係性は変わってません、なんて、どう伝えたら良いものやら。これでは巷で言うセフレみたいな関係性になってしまったようで、言葉を出すのが難しい。いや、もしかしてそういう関係なのか...?と頭を捻らせていると、ポコン、と美風くんに叩かれた。思ったより痛い。
「キミの悪い癖。言い淀むって事は、純粋に喜ぶ関係ではないけど、距離が縮まることがあったのか...。ふーん。レポートに書ける内容では無さそうだね」
「あ、あはは...」
また、ポコンと叩かれた。さっきよりは痛くない。
「この間よりはマシな顔してるからイイけど、レポートの出来悪かったら怒るからね」
「は、はい、頑張ります!」
「頑張るだけなら誰でも出来るよ。方・向・性」
「き、肝に銘じます...」
よろしい、と美風くんは自分のパソコンに向き合う。
なんだかんだと、心配してくれているんだなぁと嬉しくなる。あ、後、この間の資料間違えてたよ。え!?ど、どこですか!?と、慌てて送られてきた内容を確認する。確かに抜粋する部分がズレていて、トホホ、となる。
でも頑張ろう。
改めて気合いを入れて、パソコンに向き直って集中する。
隣の美風くんが、クスッと笑っているのには、気がつかなかった。
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「えーーーん!愛梨ちゃんと一緒に居たいのにー!」
「し、仕方ないよ、グループが違うんだし」
もうすぐ新年度ということで、新しい研究のグループが割り振られている。
私と美風くんは同じグループなのだが、嶺二くんは別のグループだ。
僕ちんもそっちが良かったぁ、と泣く演技をしながら訴える姿に、美風くんの冷たい視線が突き刺さる。