第11章 ズルイヒト♮①-2
ゴロゴロ..と、雷の音が聞こえる。
視界が暗闇に慣れてくると、うっすらとみえてくる。
目の前いっぱいの、嶺二くんの素肌に、逆にどこを見たら良いのか分からなくて、思わずぎゅっと抱きしめ返した。
一瞬、ぴくっとなったが、直ぐに力が強くなって、しばらく抱きしめ合う。
雷の音は少しずつ遠のく。
ちょっと安心したのと、触れている肌が心地よくて、擦り寄ると、愛梨ちゃん、と上から声が振ってきた。
顔を上げると、嶺二くんと視線が交わる。
その顔は、ちょっと困ったような、怒ってるような。
あんまり今まで見たことない顔に見えた。
でも、瞳は、私の知ってる、あの色だ。
嶺二くん...?と声をかけようとしたところで、更に抱きしめられたかと思うと、そのまま視界が回った。
わっ...!?と小さく悲鳴をあげれば、背中にはカーペットの感触。
暗くてよく分からないが、目の前には嶺二くんの姿と、多分背景には天井。
状況を把握した時には、キスされていた。
急に身体が、思った向きじゃ無くなったのと、呼吸がし辛くなったことで、軽いパニックになった。酸素を求めて口を開こうとすれば、そこに入ってくる何か。んっ...!?と逃げようとすれば、追いかけてきて絡まれる。
上手く息が出来なくて苦しいのに、どこかで受け入れている自分。
力の入らない手で彼を押せば、その手は取られて、身動きも出来ない。
されるがまま、吐息が漏れる。
やっと口が離れたかと思うと、嶺二くんの顔がうっすら見える。
その瞳は、風邪をひいた時みたいに熱っぽくて。
でも、それが風邪のせいではないことを知っていて。
「・・・1個だけ」
「う、うん...?」
「足りてないところがあって」
「...た、足りてない?」
うん、レポートの。
そう言われて、はたと思い出す。そういえば、研究がどうなったのか聞いたのは私だ。その返答であろう事は伺えたが、何故今?と疑問が沸いた所で、ピンときた。
「え、あ、あの、も、もしかして」
「愛梨ちゃんが、嫌なら断ってくれていい」
「...っ....」
「もちろん、途中でダメそうならやめるし、正直、無理やりは嫌なんだけど....」
「...け、けど...?」
「僕も、男だから」