第10章 ズルイヒト♮①-1
机の上にはノートやテレビのリモコンが乱雑にあり、ベッドは起きたままなのだろう、布団がめくれ上がっている。朝はそんなに得意じゃない、と言っていたから、きっと慌てて起きたんだろうなと想像して、クスッとなった。
ふと、視線を動かせば、本棚の上にある写真立て。
あれ?と、見覚えのある4人が写っている。
そうか、皆同じ高校だったのか。嶺二くんのイタズラ顔に、心底嫌そうな顔と、やれやれと言った顔で映る四人の姿は、皆さん今より、ちょっとだけ若い。
付き合いの深さが伺えて、自然と笑みが零れる。
「いいなぁ...」
「なーに見てんの?」
ヒョイ、と後ろから覗き込まれて、うひゃああ!?と飛び跳ねてしまった。
その衝撃で、写真立てが落ちる。
慌てて拾うが、目線を上げれば、まだ服を着ていない嶺二くん。
あ、あああ、あの、ご、ごめんね...!
と、視線を逸らして、写真を渡すと、嶺二くんは、あぁ、これかー、と元の場所に写真を戻している。
嶺二くんは、写真を懐かしそうに見ているが、私はかなり、目のやり場に困っている。
「あ、あああ、あの、それ、こ、高校生の時の...?」
「うん、卒業式の時のかな。色々あったけど、今でもたまにご飯行ったりするよん」
「そ、そうなんだ。皆さん、今よりちょっとだけ若いね」
「えーほんとに?歳は取りたく無いなぁ」
でもアイアイなんか、ぜーんぜん変わらないんだから!と、ふくれっ面の嶺二くんは、きっと高校の頃から変わって無いのだろう、想像して微笑ましくなる。
「あ、今子供っぽいと思ったでしょ?」
「お、思ってないよ!可愛いなって、思っただけで...」
ドゴーン!!!
また、雷が落ちた。
あまりの轟音に、思わず耳を塞いでうずくまると、照明が一瞬光って、暗くなる。暗闇と雷の音は、得意では無い。家の中にいるとはいえ、雷の音はまだ鳴り響く。どうしよう、怖くなってきた。
肩に、何かが触れる。
そのままぐっと引っ張られて、何かは、私を覆うように、抱きしめた。
石鹸の匂いと、彼の匂いが近くなる。
「...っ、...」
「・・・」
「....」
ぎゅっと、抱きしめる力が強くなった。
雷の音の代わりに、どくどくと聞こえる、心臓の音。
それはどちらのモノなのか。