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ズルイヒト《寿嶺二》

第10章 ズルイヒト♮①-1





「れ、嶺二くん!?」
「ごめん、もうちょっと頑張って!」




そう言われて、雨の中走り出す。
前にも、こんな風に手を引っ張られたことがあった気がする。
しばらく走って、着いた先は2度目ましての嶺二くんのお家。


な、なんで嶺二くんのお家に...と思っていたら、入ってと言われて、玄関先へお邪魔する。なるべく床が濡れないように、入口に立っていたら、奥から戻ってきた嶺二くんから受け取った、タオルと、多分これは、嶺二くんのシャツ。



「お風呂すぐ沸くから、先入ってて」
「え!そ、そそそんな、大丈夫だよ!そ、それより、嶺二くんのが...」
「だーめ!流石に元気な愛梨ちゃんでも、こればっかりは譲れない!」


それとも、一緒に入る?


ニヤッとされて、一気に顔が熱くなる。
お、お先失礼します!と、慌ててお風呂場へ駆け込むと、あはは、と嶺二くんの笑い声が聞こえた。

良かった、なんだか、いつも通りだ。
湯船に入ると、やはり冷えていたのか、指先がじんわりと温かくなるのが分かる。
ほっと、安堵の息が出て、ちょっと緊張していたのが分かる。


あの言葉は、どういう意味だったのか。


答えは聞けていない。 が、考えてもしょうがない。
ある程度暖まったところで、急いで風呂から出る。

そして着替えようと、よくよく考えたら、これは、また、俗に言う、あれ的なやつなのか、と借りたシャツを見つめる。どう頑張っても少し大きい彼のシャツは、彼の匂いがする。
なんだか恥ずかしくなったが、まだ酷く降っている雨音に気がついて、慌てて服を着て、脱衣所を出る。



「お、お風呂ありが...!?」
「あれー早いねぇ」



そこには、上半身裸でタオルを頭に乗っけている嶺二くん。
ちゃんと暖まった?と聞かれて、首がもげそうな程頷けば、じゃあ、僕ちんも入って来よっかな。ゆっくりしててね。と、お風呂場へ行く嶺二くん。




はぁ、とため息が出て、首を振る。このお部屋に来るのは2度目だ。
余りジロジロ見るのは失礼だとは思うが、やはり目は、部屋の中を見回してしまう。

男の子の部屋なんて、嶺二くんの部屋しか知らないけど、やはり自分とは全然違うなぁと思う。深緑がアクセントになった、シンプルだけど、センスの良いお部屋。部屋の隅に、物ががごちゃごちゃに置いてある。
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