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ズルイヒト《寿嶺二》

第1章 ズルイヒト①





・・・そして、結論を言うと、間に合わなかった。


あと少しで完成の書きかけレポートを、教授に渡して謝ろうと思って走っていると、誰かにぶつかった。ご、ごめんなさい、と言って顔をみると、その顔は先程みた


『こ、寿くん』
『めんごめんご!怪我してない?』
『う、うん、ごめんなさ『これ?』い』


と言って目の前に現れたのは、見覚えのあるUSBメモリー。


『え!こ、これ...!』
『君ので合ってる?』
『ど、どこに...?』
『うん、電車通勤って言ってたから、もしかしてって思って駅に問い合わせたんだけど、そしたら!』


電車通勤だなんて、最初の頃の研究室の飲み会で、ちょっぴり言っただけなのに。探しててくれたのか。そう言えば、美風くんと会ってから姿が見えなかったが、そんなことを考えている場合じゃ無かったので、気が付かなかった。

ほら、時間ないんでしょ!と背中を押してくれた。あ、ありがとう!と声をかけて急ぎ足で教授の所へ向かう。



遅れてすみません...!と、教授の元へ辿りつくと、おや?と首をかしげられる。
提出期限の時間を過ぎてしまったと伝えると、教授から「君の分は、明日まで待って欲しいと聞いたけれど」と返答があり、え!?と驚く。
君のレポートはいつも丁寧で、とても興味深い。研究もしっかりしてくれているからね。1日ぐらいは待って欲しいと、寿くんに言われて、かまわないと言ったんだよ。



な、なんで寿くんが、と混乱していると、それで、貰えるのかい?と言われて慌てて書類とデータを渡すと、はい、受け取りました。お疲れ様でした。と、にこやかに手を振って下さった。

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