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ズルイヒト《寿嶺二》

第9章 ズルイヒト⑥




「....分かってる。お前が、俺の事そんな風に思ってないってのも」
「....っ...い、いえ、そんな...」

「男の俺から見てもカッコ良いもんな、あいつ。距離感掴むの上手いって言うか、羨ましいもん。あんなにモテたら、俺調子乗っちゃいそうだし」
「せ、先輩だって、カッコ良いです!」

「ははっ!サンキュー!でも、お前が好きなのは、俺じゃ無いだろ?」
「ぅ...」
「好きな子に褒められるのは嬉しいけど、振られると思うと、ちょっと虚しくなっちまう」





言葉が出てこない。


わりーわりー!うー、寒いなぁ、そろそろ行くか!と、困ってる私を見兼ねて、切り出してくれた先輩。
こういう時、どう言うのが正解なのか、研究しても、永遠に分からないと思う。でも、ちゃんと伝えなきゃと思う。




「あ、あの、先輩!」
「ん?」

「あの、私...人付き合いが下手で、沢山話しかけて下さったこと、ほんとに感謝してます。一緒に研究させて頂けて、幸せでした。せ、先輩の思う好意では、無いかもしれないけれど、本当に、嬉しかったです。ありがとうございます」



頭を下げると、そのままワシワシされた。
ひゃっと、頭を上げると、優しい目をした先輩。



「お前なぁ...」
「は、はい」
「あんまり優しすぎると、諦められなくなるぞ」
「え!いえ、ええと...」
「ははっ!じゃあこれで終わり!」





そう言って、目の前が先輩だけになる。




一瞬のハグだったから、びっくりしたけど、先輩の顔をみて、また泣きそうになってしまった。

はい、おしまい!ありがとな!帰るぞー!

と、先輩は笑い出す。は、はい!と返事して、帰り道を歩く。

アイツに泣かされそうになったら、言ってこい!と頼もしい言葉も頂いて。
恵まれている、そう感じながら最寄りの駅まで歩く。
































それは、私の中で、大きくて小さな波紋で
































波紋は、広がっていくことを、この時は知らずに
















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