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ズルイヒト《寿嶺二》

第8章 ズルイヒト⑤-3





あ、ここは夢の中だ。




そう気がついたのは、目の前の光景。
どこかのライブ会場なのであろう、私は今、観客席にいる。
4人の男性がステージで歌って踊っている。だが、その顔は逆行で見えない。ふと、帽子を被っている男性が、こちらを見て笑いかけてくれている気がする。
そして、私を指さして、手を伸ばしてきた。届きそうで、届かない距離。
急に冷たい風が吹いて、帽子が飛ばされていった。
その顔は、私がよく知ってる___.....




「...れいじ、くん?」
「うん、嶺二くんでーす」
「....れいじくん....だったんだぁ...」
「僕がどうかした?」
「...キラキラ...してて....すごく....カッコ良く、て...」
「...うん」
「....かっこよくて....手が...届かなくて....」
「ちゃんと、居るよ?」



ふふっと、笑い声が聞こえて、声の主に、抱きしめられた。
暖かい。そう感じて、私も抱きしめ返す。
わー、甘えん坊さんだね。可愛い~。と、更にギューッと抱きしめられて、苦しくなる。あれ?苦しくなる?


ゆるゆると目を開けて、目の前にある光景を確認する。
そこには、満面の笑みの嶺二くん。
そして、自分がしがみついているのは、嶺二くんの身体。
状況を思い出して、一気に頭が覚醒する。




「!?!?」
「あ、起きた?おはよう~」




と言っても、もう暗くなってるんだけどね。と抱きしめていた腕が、私の頭をポンポンと撫でる。ご、ごめんなさい!と言って、慌てて起き上がる。
あら、残念。と、嶺二くんも一緒に起き上がる。
やってしまった。お見舞いに来て寝てしまうだなんて、申し訳無さすぎる。気が動転していたが、さっきまで、嶺二くんの隣で寝ていたのだ。
それも、抱きしめられながら。余りの醜態に、顔から火が出そうだ。



「あれ?風邪、移っちゃったかな?」
「ううううううん!!全然!元気だよ!!ほんとに!!!」
「ほんと?でも、もう今更かな」
「ごこごごめんね!!お布団お邪魔して....!!あ!た、体調は!?」
「大分熱は下がったと思う。ほら」



そう言って、おでこ同士がくっつく。
また顔が近くなって、息が詰まりそうになる。むしろ、私の方が熱いんじゃないかと思うくらいで、嶺二くんに笑われた。
そしたらそのまま、軽く、キスされた。




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