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ズルイヒト《寿嶺二》

第7章 ズルイヒト⑤-2



恐る恐る、スプーンを口元へ運ぶと、パクッと、嶺二くんが食べてくれた。
ちょっと手が震えてしまったが、モグモグしてる嶺二くんが、また口を開けて催促する姿が、なんだか可愛くてしょうがない。


ペロリと平らげてしまった嶺二くんに、薬と水を渡すと、それを飲んで、布団に入っていった。空になった食器を片付けて、寝室に戻る。




「ありがとー、愛梨ちゃん」
「ううん、何もしてないよ。熱はどう...?」
「元気だよーん。熱は、うーん...変わりなし?」




ピピッと鳴った体温計を、嶺二くんが見てさっとしまい込む。違和感を感じて、み、見せて!と体温計を奪うと、かなり高い温度。
大丈夫だよー!と体温計を奪い返そうとする嶺二くんを布団に押し返して、ダメ!しっかり寝て!とちょっと大き目の声で叱ると、嶺二くんはパチクリと目を見開いた。そのまま冷蔵庫に入れた買ってきた冷えピタと、氷枕をセットして寝かしつける。



「熱が下がるまでは、安静にしなきゃダメだよ。汗かくだろうから、お水と、後ポカリとかも、こっちに置いておくから、こまめに飲んでね。」
「...はーい...」
「これ以上、熱が上がるなら病院行った方が良いよね...でも、お正月だと病院やってないかな...」



うーん、と悩んでいると、あはは!と嶺二くんの笑い声。な、なんか変なこと言ったかな...?



「ごめんごめん、なんて言うか、こんなに強い愛梨ちゃん、初めて見たなぁって」
「つ、強い...?」
「うん、いつも僕が近づくと、オドオドしてるって言うか、食べちゃいたいって可愛い感じなのに、今はカッコ良いかな~・・・あ、赤くなった」



やっぱ愛梨ちゃん、可愛いねぇと、体調は辛そうなのに、凄い笑顔で凄いことを言われている気がする。
そ、そそそうなんだ...としか返せない自分がいる。相手は病人だ。気を確かに持て、私。

でも、熱に浮かされてるのか、ちょっとフワフワしてる嶺二くんは、不謹慎ながら可愛い。愛梨ちゃん、愛梨ちゃん、と声を掛けられる。



「な、なぁに?嶺二くん」
「...手、貸して」



手?


と、差し出すと、嶺二くんの顔がピタッとくっついた。
冷たくて気持ち良い~と擦り寄られるが、そう言えば、先程洗い物したばかりなのを思い出す。
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