第7章 ズルイヒト⑤-2
藍が?と、美風くんの名前を出すと、眉間の皺が少し緩んだ気がする。
そしたら、ちょっと考えた風で、まぁ、上がれ、と言われた。
お、お邪魔します...と玄関に入れば、だれかきたの~...?と、なんとも細々しい声が聞こえる。その声は知った声で、良かったと思うと同時に、やはり辛そうなのが、分かる。いそいそと、寝室らしい場所までついて行く。
「藍から見舞いだ。つーか病人は寝とけ」
「えー、アイアイからお見舞いって...え!」
「こ、こんにちは...」
そこには、布団の上に居る嶺二くん。驚いた表情に、レアなものを見たと思う。
な、なんで愛梨ちゃんが...と、珍しく焦っているような嶺二くんに、やはり迷惑だったかと感じ、直ぐにお暇しようとするが、男性に、いーから座っとけ、と言われて、座らせて貰う。
「あー、なんだ。こいつ、さっき熱下がったばっかだから、無理させないよう見張っとけ。」
「え、あ、はい....」
「もう大丈夫だってば!心配性なんだから~!」
「真夜中に『助けて☆』って連絡してくる奴の言うことなんざ、信用ならねぇ」
新年早々、呼び出される身にもなりやがれ。と指を突きつけている彼に、め、めんご~、とタジタジな嶺二くんを見て、また貴重な姿を見た気がする。
じゃあな。そいつのこと頼んだぜ。と言うと、早々と出ていってしまった。
「・・あ、あの、ごめんね突然お邪魔して」
「あー...それは、全然大丈夫なんだけど...恥ずかしいトコ、見せちゃったなぁ...」
「そ、そんな事ないよ!も、もしかしたら、あの日のせいかなって...」
「あはは、あれだけカッコつけたのに、かっこ悪いよねぇ」
そんなことは無いと言いつつ、何か手伝えることはないかと尋ねると、薬を飲むからお粥を、と言われたので、その通りにする。台所へ行くと、言われた通りに鍋にお粥が入っていた。まだちょっと温かい。
さっきの男性が作ったのだろうか、冷蔵庫には栄養ドリンクやらも入っている。持ってきたゼリーなども仕舞わせて貰って、お粥とお水を用意して嶺二くんの元へ戻る。
「れ、嶺二くん、お待たせ。起き上がれるかな..?」
「うん...ありがと~」
そう言って、身体を起こす嶺二くん。そのまま口をパカッと開いて、こちらを見ている。
これは、その、あれだろうか。
例の。
