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ズルイヒト《寿嶺二》

第7章 ズルイヒト⑤-2





「....あれ?美風くん?」
「あぁ、水野さん。明けましておめでとう」
「あ、明けましておめでとうございます」




クリスマスが終われば、直ぐにやってくるお正月。
早いもので、つい何時間前に年が明けたばかりだ。
地元の神社へ参拝を、と来てみれば、意外な人物に遭遇した。
おみくじの前で番号札を渡したら、隣から聞き覚えのある綺麗な声が聞こえてきたものたから、ふと見れば美風くん。



「奇遇だね、こんな所で会うなんて」
「そ、そうだね、私は家が近いから...」
「僕はこの辺に用事があって、ついでに来てみたんだ。行ってみろってうるさいから」



それは誰かに言われたのだろう。私と一緒に来ている家族は、甘酒を貰うための列に並んでいるため、傍には居ない。
美風くんは1人?と声をかけると、首を横に振って、同行者は人混み苦手だから、離れた所で待っていると教えてくれた。


私達もおみくじの中を見るために、端の方へ寄る。
おみくじを開いてみると、私のは「小吉」だと伝えると、美風くんは「吉」とのこと。
これって良いの?と聞かれれば、私のより良い方だよ、とお返事させて頂く。神社によって様々ではあるが、大吉の次が吉らしい。

おみくじの運勢も気になるが、内容が気になるところ。私のは要約すると「現状は悪くないが、今後良くなるかは分からない。全ては自分次第」とのこと。
なんだかドキッとする内容ではあるが、今年1年、少し気を引き締めて行こうと思った。美風くんは、ふ~ん。と言って、おみくじをしっかり読んでいる。美風くんなら、おみくじの内容なんて関係無さそうな1年を過ごしそうだなと思っていると、そういえば、と、こちらと目が合う。



「レイジのことなんだけど」
「は、はい!?れ、嶺二くんのことですか?」



また見透かされたのかと思って、声が裏返ってしまった。
水野さんは大丈夫?と聞かれて、な、何のことでしょうか...?と返せば、体調。レイジ、風邪引いたって聞いたけど、と言われて、え?となる。



「れ、嶺二くん、風邪引いてるの??」
「知らなかった?確か、年末ぐらいから、体調悪くなったみたいで、昨日かなり熱出したって聞いたけど」





そんな話聞いていない。
明けましておめでとうのやり取りだって、今朝したばかりだ。
文字で、だが。




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