第6章 ズルイヒト⑤-1
あれから、どうやって帰ったのかよく覚えていない。
熱に浮かされたように、ぼーっとしてしまって、いやだった?と聞かれて、首を思いっきり横に振ったのは確かだ。
そのまま多分、送って貰って、またねと会話したような気がする。
帰って早々、部屋のベッドに飛び込んで、枕に顔を埋めながら声にならない声を上げた気がする。近所迷惑への配慮ができた自分を褒めてあげたい。
感触を思い出してはジタバタし、お風呂どうぞと伝えにきた家族には、変な目で見られてしまった。恋愛初心者には刺激が強すぎる。
シャワーを浴びて少々落ち着いたこところで、プレゼントの存在を思い出した。
綺麗なラッピングを開けてみれば、そこには、花の真ん中に黄色や緑が混じったような宝石が付いた...指輪。と、シルバーチェーン。
ゆ、指輪!?と思えば、それはどうやらピンキーリング。首から下げられるようにチェーンもセットでくれたのだろう。どんな意味で贈ってくれたのかはわからないけれど、とても可愛い。
お礼言わなきゃ、と少し悩むがスマホに文字を打ち込んでいく。
『プレゼントありがとう
とっても可愛くて
付けるの勿体ないぐらいだよ
大事にするね
おやすみなさい』
ピロン
『僕も大事なもの貰っちゃった
次会えるの楽しみにしてる♪
覚悟しといてね
おやすみ
メリークリスマス!』
うぇ!?と思わず声が出る。覚悟って、な、何を....いや、流石にうっすら感じてはいるが、複雑な感情が入り交じる。
彼とはどんな関係か、と問われれば、答えに戸惑う。
では彼への気持ちはどうかと聞かれれば、あの日から変わっていない。
いつも周囲への配慮を忘れない彼の姿には尊敬している。
それに、時折見せる、彼の表情が、あの瞳が、頭から離れない。
全部見透かされているような瞳に、怖くなって、でもそれ以上に、もっと覗きたくなるような、そんな気持ちにさせられる。
少なくとも、好意のない相手にあんなことはしない.....と、思いたい。
どんな気持ちでいれば良いのか分からないまま、期待と不安と、そしてやはり先程の行為を思い出して恥ずかしくなって、布団で暴れて、そんなことを繰り返して夜は更けていった。