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ズルイヒト《寿嶺二》

第6章 ズルイヒト⑤-1




「...それでね、カミュさん、すっごくオススメするのが上手でね。友達は『来年も頼むか...』って言ってたんだよ」
「あはは!あの2人らしいねぇ」




キラキラの街路樹を歩く。周りもほとんどがカップルなので、自分達もそう見えるのだろうかと思うと、嬉しいような、複雑な気持ちだが、繋いだ手の暖かさは本物で、ここに、嶺二くんが居るのは確かなのだ。




くしゅん



と、くしゃみが零れる。私ではない、嶺二くんだ。
もう結構時間が経ってしまっている。
こんな寒空の中、私よりも彼の方が長い時間居るのだ。
風邪を引いてはいけない、そろそろ帰ろうかと提案すると、じゃあ帰る前に、と渡される、可愛いラッピングの箱。


「...こ、これって...?」
「うん、クリスマスプレゼント」
「え!あ、ありがとう...!」
「帰ってから開けてね」
「あ、う、うん。落としたら大変だもんね...」
「あはは、じゃあ、はい!」
「....?」
「僕ちんへのプレゼントは?」
「え!えっと....あ!ご、ごめん、今は、無い...かも...」



両手を差し出してくる嶺二くん。.
困った。実は、私も用意している。嶺二くんへのクリスマスプレゼント。
だが、ここには無い。まさか会えると思わなかったので、自宅に置いてきてしまった。さっき貰ったケーキなら、と提案するが、首を横に振られる。



「じゃあ、代わりじゃないけど、くれる?」
「...?...代わりのものなんて、何か







あったかな?








そう言おうとして、言葉は出なかった。













触れた瞬間に、冷たく感じた熱い何かで塞がれて、息が出来なくなる。

何されてるのか、一瞬分からなかった。

それがキスだと自覚するのに、どれくらいの時間が経ったのだろう。













「・・・・っ!れ、嶺二く....!」
「......もうちょっと」
「まっ、ん.....!」







キスって、こんなの、知らない。

経験がほとんど無い自分だけど、こんなに怖くて、でも怖くなくて、自分の意思じゃ、どうにもならないようなものなのか。
思わず身を引いてしまいそうになるが、ダメだと言わんばかりに、嶺二くんにぐっと引き寄せられる。


何度も角度を変えては、塞がれる。


こんなに寒い日なのに、なんだか熱かった。
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