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ズルイヒト《寿嶺二》

第6章 ズルイヒト⑤-1





「ほんっと~に助かったよ!ありがとう愛梨」




お店も閉店に近くなった頃、後はこちらでやるから、と帰宅の許可が出た。
カミュさんは、バックヤードでお礼と渡されたケーキを大量に食べている。

助けになれて良かった、とカミュさんや友人にお別れを言い、お土産、と渡されたミニケーキを持って、外に出る。辺りはすっかり暗くなり、広場ではクリスマスツリーのイルミネーションを見るカップルばかりだ。



もうすっかり寒くなったこの時期のイルミネーションは、それはそれは綺麗で、遊園地でみたパレードを思い出す。
観覧車での出来事を思い出し、なんだか恥ずかしい気持ちになってしまった。首をブンブンと振って、スマホの画面を見る。

そこには、皆で買ったお揃いの帽子を被った写真。
ウィンクを決めている嶺二くんと、お菓子を頬張っているカミュさんに呆れ顔の友達と笑っている私。ふふっと笑って、思わず口から零れる。




「...会いたかったな」
「僕に?」





都合の良い幻聴だろうか、えっ!?と驚いて、後ろを見る。
そこには思っていた相手の姿。マフラーを巻いて、鼻の頭は赤くなっている。お疲れ様~!と笑いかけてくれる。




「れ、れれれ嶺二くん!?」
「はーい、嶺二くんでーす!」
「な、ななななんでここに!?」
「ミューちゃんに、そろそろ終わるって教えて貰ったんだ」



サプラ~イズ!と、ブイサインを出して二カッと笑う嶺二くん。
確かに驚いたが、その手が赤くなってるのに気付いてはっとする。




「れ、嶺二くん、いつからここに居たの?」
「ん~、そんなに居ないよ。30分くらい?」




それは結構な時間では無いのか。こんな寒空の中を....待っててくれたことへの嬉しさと同時に、申し訳なさや心配をしてしまう。
持っていたカイロを取り出して、赤くなった手ごと握りしめる。
少し驚いた様子の嶺二くんだが、ありがとう、と言って微笑んでくれた。




「まだ時間大丈夫だったら、ちょっと歩かない?」
「あ、うん、大丈夫...!」
「良かった!じゃあ行こう」





そのまま、手は嶺二くんのポケットに仕舞われた。
繋がった手が暖かいのはカイロのせいだけじゃないと思う。
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