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ズルイヒト《寿嶺二》

第4章 ズルイヒト③





「あ、愛梨ちゃん、ここなんだけどね」
「なななななんでしょう、れ、嶺二くん!」



研究室でのやりとりに、美風くんがパチクリと、それはそれは綺麗な瞳をこちらに向けているのがわかる。あ、なるほどね!ありがとう愛梨ちゃん!ちょっと待っててね!と、手を振って、部屋を出ていく。


はぁぁ...と深いため息をついたら、美風くんが近づいてきた。


「....なんでしょうか?美風くん」
「僕の勘違いの可能性もあるんだけど、レイジと何かあった?」
「....なぜでしょうか?美風くん」
「いつもより40cm近い。余程のことがない限り、レイジはパーソナルスペースを変えたりしない。付き合ってるのかと思ったけど、それにしては君の反応が戸惑い過ぎてる。後、」



なんなの、その話し方。と腕を組みながら怪訝な顔で見下ろされる。


もうなんとなく、美風くんにもバレてしまっているこの気持ちは、この際置いといて。お答えするならば、ただ今、検証真っ最中である。


『まずはお互いの距離を縮めるために、嶺二って呼んでね!間違えたら...罰ゲームにしよっか?』と、にっこり笑顔で言われてしまい、必死で間違えないようにしている。

男の子の名前を呼ぶなんて小学生以来ではないかと思う奥手過ぎる自分には、好きな人の名前呼びはあまりにもハードルが高すぎる。
何より、好きな人から呼んで貰う自分の名前は、ちょっと特別に聞こえて、動揺してしまう。なんだろう、あの声で呼ばれると、ビックリしちゃう。

声と言えば、美風くんの声はほんとに綺麗だなぁ...と明後日の方向に考えていたら、聞いてる?と返事を促される。



「あ、え、えっと、うん。その....心理学の検証と実践と言いますか...」
「なにそれ?誰の何てテーマ?」
「い、一応、私のと...れ、嶺二くんのと、2人のそれぞれを...」
「君と、レイジの?」
「...れ、恋愛相談...の名のもとに、実践中かな...」
「・・・言い出したのはレイジか。安易なネーミングだね」



検証会なんて可愛くないから、恋愛☆相談ってことで!と言い出したのは嶺二くん。え、えへへ、と苦笑いで返すと、ふーん....と何やら考え込んでいる美風くん。
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