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ズルイヒト《寿嶺二》

第3章 ズルいヒト②-2




にこにこの
寿くんが
こちらを見ている。



「あの、ち、ちなみに、検証対象における人物って...」

「僕と、水野さん」
「私と、寿くん」

「・・・・」
「・・・・」

「えっと、その、つまり...」
「まずは、一番わかりやすいところだと、呼び方かなぁ?」
「よよよ呼び方」
「うん、ぼくの名前、知ってる?」
「こ、寿、嶺二、くん」
「うん!愛梨ちゃん!」


お待たせしました~、とここで注文していたお酒が届く。
はい、愛梨ちゃん、と寿くんからグラスを受け取る。


「僕ばっかりじゃ悪いから、愛梨ちゃんの研究も手伝えるかな?」
「うぇ!?だ、大丈夫だよ!あの、寿くんのお手を煩わせ「嶺二」る....れ、嶺二くん...」

「うんうん!なんだっけ、確か...コミュニケーションの...」
「あ、え、えっと...“レジリエンスを高める為のコミュニケーションの仕方の実証”、で、です」
「そうそう!アイアイが気になるって言ってたんだよね~」


レジリエンス...これは、困難や逆境に適応する能力、適応するまでの過程や結果、なのだが、要するに、私の研究は『凹んだ時に、すぐに回復できるような人との関わり方』と言うこと。


美風くんが気にしてくれていた事も嬉しいが、私の研究に、寿くんの存在はむしろ願ったり叶ったりではある。だが、彼の研究内容のお手伝い内容に、頭と感情を一致させる事ができない。

要は彼の内容は『男と女がもっとお互いを知っていくとどうなるか』って言うお話。



「僕じゃ力不足かな?」
「そそそそそんな滅相もない」
「良かった!じゃあ、交渉成立ってことで!」



改めてカンパーイ!と、グラスの合わさる音が響く。
どうしてこうなった、と、混乱する私に、嶺二くん...は、今日一番の微笑みで言う。



「よろしくね、愛梨ちゃん」



その笑顔が眩しくて、また、グラスの中身をイッキ飲みする。流石に頭がくらっとするのは、お酒のせいだと言い聞かせる。寿くんも同じようなペースのはずなのに、全然酔った風に見えない。


『お酒が強い』だけじゃない気がするよ....美風くん...。



と、少し前のやりとりを思い出し、これからくる未来が予測できないまま、思考はアルコールにとけていった。
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