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ズルイヒト《寿嶺二》

第3章 ズルいヒト②-2





「カンパーイ!」
「か、かんぱーい...」




無事に待ち合わせ場所へたどり着くと、こちらへ向かう寿くんの姿が見える。ごめん、お待たせ!と、小走りしてくる寿くんに、いや、ほんとに、全然!!と、首をブンブンと横に振る。
アハハ、じゃあ行こうか、とお店までの道のりを隣り合わせで歩く。


着いたお店は、半個室の、賑やか過ぎない、良い感じのお店だ。
そして、寿くんの凄さを改めて思う。


車道側を歩くのは当たり前、歩幅を合わせてくれたり、道中も荷物を持ってくれたり(それ?僕チンにくれるのって!ありがとう~!と言って、私の荷物まで持ってくれた)、苦手なもの再確認してくれたり、注文もテキパキ頼んでくれて、ほんとにソツがない。

話し下手な自分は、へー、とか、うん、しか言えないものだから、良くこれで場が持つなぁと、感心してしまう。冒頭に至るまで、ずっと分析してしまった。
寿くんのおかげで、最初よりも緊張しなくなったので、お酒もちょこちょこ進んでいる。



「――てな感じで、ついつい、お節介を焼いちゃってさぁ」
「そ、そんなことないよ。きっと後輩さん達も、感謝してるよ!た、多分」
「アハハ、そうかなぁ。水野さんはそう思う?」
「え、う、うん...私だったら、嬉しい、かな」
「嬉しい?」

「えっと...誰かの行動の意味なんて、受け取る側次第だなって、思うから...」
「ふむふむ」

「人によって、感じるものは違うし、やり方が違うけれど、結局は『こうであって欲しい』『こうしたい』『こうされたい』の、全部、自己満足の世界だもの」
「うん」

「だから、推測するのは難しいし、周りの反応や、言葉で無理やり納得するしかないけれど、寿くんの“お節介”は、誰かにとっての”優しさ”だと思うから」
「・・・うん」

「私は、相談ごととか、沢山の人と話すの、苦手だから。寿くんが“お節介”だったお陰で、私の探し物は見つかったし、助かったよ。自分がこうしたから、こうなった、の結果は、結局相手を満足させようという、自分の自己満足の結果だよ。だから、そこまで行動できる寿くんのこと...」





はた、と気がついた。
寿くんがじっと見つめている。
私を。





「...僕のこと?」
「...っ!えっと、あの...」






笑みを浮かべている、寿くん。


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