第1章 EMPIRE STORY
ジーッ
至近距離で穴が開くんじゃないかと思う程見つめられては、さっきまで背筋を伸ばしていた彼女も、若干腰が引けている。
「思ったより小さいね」
「...は、はぁ」
「アイアーイ!初対面のお姫様にちょーっちそれは失礼じゃない?」
「ねぇ、顔見せてくれない?」
「わぁ、全然聞いてない」
「あの...こちらのベールは....その」
「アイ、王族とは言え、女性への接し方は弁えなければいけませんよ。ましてや、我々の伴侶になる....かもしれない方ですから」
「てめーらでやってろ。俺には関係ねぇ」
「おや、仮にもプリンスともあろう者が、責務を放るなどとは....流石頭の中身が空っぽの方は違いますね」
「んだと、脱色ワカメ」
「黙れ、たんぽぽ頭」
「はいはーい!お姫様の前で喧嘩しなーい!」
ベールの下で表情は見えないが、さっきまで神秘的な姿に見えた彼女は、彼らのやり取りをきょとんとした様子で聞いている。
その間も、アイは彼女の前から動かない。じっと彼女を見つめて、うん。と頷く。
「ベールはキミの顔を隠して守る為なんでしょ?ここには僕達しか居ないし、問題はないよ。それに、顔が分からないとセックスできないらしいから」
「「セッ...!?」」
「おまっ!?」
「おや」
一気に挙動不審になる姫と、焦るレイジとランマルに、面白いモノを見た、とカミュ。
「なに?だって、ランマル言ってたよね」
「おまっ、違っ、そう言う意味じゃねぇ...!!」
「アイアイったら、素晴らしい解釈」
「あの、ここで外したら、致さなければならないのでしょうか...?」
「違うからね、そんなしきたりないからね」
「ふむ、それも一興ですが、流石にそれは酷と言うモノ。姫、どうか我らに、ご尊顔を見せては頂けないでしょうか...勿論、そこの馬鹿と違って、本意でないことは致しませんよ」
「....おい、そりゃ誰のことだ?」
「おや、バカの自覚があるようで」
その瞬間、空気が熱くなる。
ボゥッ、とランマルの周囲を炎がまとわりつき、近くにいたレイジは、どわっ!?と、仰け反る。
「てめぇ...そんなに焼かれてぇのかよ」
「やれやれ、下賎な生まれの者は、マナーがなっていないようですね」
その瞬間、目を見開いたランマルの周りから、より大きな炎が燃え上がる。
