第4章 隣のトキヤくん④
「よっしゃ!ほな、にーちゃんやな!」
「何故に?」
ええねん!その方が仲良ぉなるやろ!
と、関西弁で陽気に喋るこの先輩のノリに当てられて、思わず突っ込んでしまう。なんでやねん!とだけ言わなかった自分を褒めよう。
夏休み前のテスト期間。
授業の合間や昼休みに図書室や空き教室で勉強する人が増える中、もれなく自分もその1人である。だが、この目の前の背の高い、髪の毛バッチリセットされた、同じ学部の先輩は、どうやらそれが目的では無いらしいのは分かった。
はて?サークルの件で来たのでは?と首を傾げていたら、第一声がこれだったので、説明を求めたい所である。
「自分ら、いつも隣におるって有名やないか!なんかこう、うま~いこと、セットな呼び方したくてなぁ!ほんで、数字の1の隣には2やろ?せやから、お嬢ちゃんは2番の、あ、2ヴァーンのにーちゃんや!あ、にい(↑)ちゃんやないで?にー(→)ちゃんや!」
そ、そうですか!とどこか圧倒されてしまう。
やばい、このまま先輩に合わせていたら絶対楽しくお喋りしてしまう。
さり気ない自己紹介を挟む説明も、先輩の事が嫌いでも悪い人でもないのは、以前のサークル体験時に確認済である。私も元気いっぱいの人間だが、彼に比べると霞んでしまいそうだ。
いや、別に比べる必要はないけれど、どうも勝負癖があるのは良くないな。と頭をブンブン振る。
「なんや頭痛いんか?冷えピタあるで?」
「オカンか!」
しまった、黙っていられなかった。1人でこのノリを交わしきる自信はない。早く戻ってこい彼の目的の男よ。目の前の先輩は、オカン!それもオモロいなぁ!と気にしてないと言った様子で背もたれを前にして私に話しかけてくる。向かい合わせだ。勉強しづらい。