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隣のトキヤくん

第12章 隣のトキヤくん⑫




「....唐揚げって、なんかピンポイントだね」
「...そうだね」



隣で一緒に食べている、同室の女の子に、不思議がられてしまったので、あはは、とこちらは苦笑いするしかない。


奴は、どういうつもりでそんな事言ったんだろう。
多分、彼の隣に居る自称兄にでも言われたのかもしれない。だって、彼はそんな高カロリーな物を例えに出すと思わないから。

いや、まぁ、別に『唐揚げを美味しく食べる子』が、私って決まった訳ではないけどさ。
そう思いながら、このお皿も空にした。お代わりを貰いに行きたいけれど、奴が焼き係してるので、なんとなく行き辛い。


その様子に気がついてくれたのか、同室さんは、デザートもらってこようかな、にーちゃんも行く?と誘ってくれた。うん、と返事して、空になったお皿を持っていく。みんな気が利く人ばかりだ。お陰で甘えた人間になってしまう。


原因は多分、お隣の誰かが世話焼きなせいだと思っておく。
ぐっと立ち上がって、足に力を込める。


近づく私達に部長が気がついて、まだまだあるでー!と山盛りのお肉がのったお皿を見せてくれた。そこに野菜をのせている彼に笑って、いただきマース!と駆け寄る。


気にしてたってしょうがない。
めいっぱい今日を楽しもうと、何回目か分からないお代わりを手に取った。














「デザートも美味しかったね~」
「うん、ほんとに~」


さっきまで山盛りのお肉を食べていたとは思えない量のデザートを食べきった私は、上機嫌で返事をして川でプカプカ浮いている。
何だかんだで、同室の彼女が一番仲良くなれた気がする。彼女はとてものんびり屋さんで、今までかなりインドア派だったらしく、サークルに入ってはみたいけれど、身体を動かしたり、活発な所が苦手らしく、大学で変わりたいと思って、このサークルを見つけて、思い切って来てみたんだそうだ。


確かに、アウトドア、インドア過ぎずの丁度よい感じの活動内容ではあるので、納得である。


「にーちゃんは...どうするの?入る?」
「え、うーん、そうだね、入ろうかなぁとは考えてるけど...」
「けど?」
「.....ううん、多分、入ると思う」
「そっか。じゃあ、よろしくだね」
「うん、改めてよろしく!」


笑顔で握手を交わした。
彼は入るのか、なんて考えてたことは言わないでおこう。
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