第3章 隣のトキヤくん③
朝はサラダとトーストにコーヒーと決めているので、トーストのお供を気分で変えている。
自然の味が1番だと思うが、甘い物好きな彼女の為に、買っておいた物の1つだ。他にもイチゴやブルーベリー、マーマレードなんかは趣味で作ってみたり、その度、美味しい美味しい!と食べる姿をみれるのは、やはり嬉しいもので。
そんな彼女の好物はお伝えした通りの甘い代物。朝からそんなモノを...と感じなくもないが「集中するには適度な甘味は必要なんだよ?それに明日世界が滅亡したらどうするの!?」と力説を頂いたのはいつだったか、昨日からかい過ぎたお詫びも兼ねて、彼女専用の好物を置いておく。
きっと、またあの笑顔で美味しい美味しいと食べる姿を想像してコーヒーを注ぐ。もしかしたら、家族より互いの顔を見ているかもしれないな、そんな事を考えながら、カップを2つ並べる。脱衣場の扉が開いて顔が出てきた。
「食べたら一戦できる?」
「ダメです。帰ったら」
OK!夢では勝ったからいける!と顔が脱衣場に消えていく。そこまで負けたくないのか、と負けず嫌いの幼馴染に対して笑いが込み上げる。ここまで長い付き合いだか、よくも飽きないものだとお互いに、感心すら覚える。
今日も良く晴れそうだと、まだ蝉が鳴かない夏の入口の日差しを、窓から見上げながら彼女を待つ。
コーヒーは先にひと口。独特の苦味が広がる。
そう言えばミルクが切れそうだった、ブラック派ではない誰かさんの為にも、晩御飯のメニューを考えながら買い物に行きましょう。と今日の動きを決める。
「お待たせ...ん?何笑ってるの?」
「いえ、今日は何にしようか考えてました」
「オムライスに1票!」
「困りました、票が割れてしまいますね」
えぇー!清き一票を!と両手をあわせる彼女に、はい、頂きますと自分も両手を合わせてサラダに手を伸ばす。いただきます...って話逸らさないの!との声にまた笑いながら、頭の中の買い物リストに卵とケチャップを追加して、食事を始める。
むーと、唸る彼女だが、食べ始めればパーッと顔が明るくなる。餌付けされた雛みたいだ、とすると私は親鳥ですか、それも面白い。また抗議されるのは目に見えているので、伝えようとは思いませんが。
私の幼馴染は、授業中でも寝てしまう、負けず嫌いで、からかうのが面白くて、食べる事が好きな、表情が良く変わる女の子。
