第1章 隣のトキヤくん①
「ほんとーに付き合ってないの?」
午前の講義が終わり、学食でのランチタイムでのお喋りは楽しいもの。
女子が盛り上がる話題なんて毎回同じだよなぁと相槌をうちながらパスタを頬張る私に、何度目かわからない質問が2人から飛んでくる。
「今日も朝一緒に居たじゃない!」
「あれは用事があったのー」
「とか言って~。こないだも見かけたよ~」
「私も見かけた!」
「良いよねぇあんなにカッコ良い幼馴染~」
「うーん、カッコ良い...かな」
「お前は幸せ者だな...」
少しぐらい幸せ分けろ!と、私の和風パスタを奪って行く向かいの友人。やれやれ、と代わりに相手の卵焼きを半分奪う私。楽しみに取っておいたのにー!!と喚かれるが、食べ物の恨みだと無視してパスタの続きを口に入れる。ケタケタ笑いながらデザートを食べる隣の友人。
「てかマジな話、ほんとに付き合ってないの?」
「だから言ってるじゃん「「ちょっと距離が近い幼なじみ」」って...セリフ被ってますけど」
「それだよ。それが問題なの!」
「どれですかね?」
「だからー!幼なじみって言ってもさ!こう、距離感?ってのがさ!あるじゃん!!」
「いや、だからちょっと近いよなぁとは思ってるんだってば」
「カッコ良いと思わないの??幼馴染だと見慣れてしまう感じ??付き合いたいって思ったことないの!?」
「だからさ~」
「はい。もう行かないと間に合わない~」
時計を見るとこんな時間。残ったパスタを全部食べきりご馳走さまをしてトレーを返却。午後の授業に向かう。
「次選択か...てことは居るじゃん!」
「うんうん、私らは違う教室だけどねぇ」
「あー目の保養したい。授業代わって」
「まだ続くのその話?」
だって~!と賑やかな友人らに別れを告げ、1人教室へ向かう。既に何人かは好きな席に着いている。そして定位置になっているであろう窓際付近後ろから3列目のそこに、先程の話の主役は居る。