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隣のトキヤくん

第10章 隣のトキヤくん⑩






「「「うわぁ~!!」」」



先程までのモヤモヤが無かったかのように、目の前の輝きに心を奪われる。


歩いている時は、懐中電灯やスマホのライトなりで、周りが光っていたせいで、星もうっすらだったが、目的地に到着し、レジャーシートを敷いて、皆で寝転ぶ。
そして数分間、目を閉じて改めて開くと、先程とは大違いの景色が広がっていた。




「人工の光が無いだけでこんなに違うんですね」
「すっごいキレイ...」
「せやろせやろ~」
「でしょでしょ~!」
「なぜ寿さんも得意げなんですか」
「トッキー冷たい!!」



こんな時でも、変わらず賑やかだ。

隣で寝転ぶ幼馴染みも、いつもと変わらないように見えるが、その顔は穏やかで、嬉しそうだ。
横目で見ていると、視線がぶつかる。しばらく無言で見つめていたように思うが、また、星空を見上げる。
私も、星を見る。





「「...綺麗だね(ですね)」」



...確か、夏目漱石が、アイラブユーを月が綺麗ですね、と、訳しただとか言われているが、事実は異なるんだとかなんだとか。一度、隣の彼と論争になった事がある。
あーだこーだ言って、結局、トランプで決着を付けたのだが、あの時も私の負けだった気がする。
思い出して腹が立ってくると、隣からふふっ、と笑い声が聞こえる。

同時に、また視線が交わされる。
きっと、同じことを思い出してたのだろう。
そんな確信めいたことを感じながら、帰ったら勝負ね。また勝てないのでは?のやりとり。


「これだけ星があったら、叶えてくれるはず」
「叶えるのは、流れる星ですよ」


また、隣の笑い声が耳に入る。
いつもの憎まれ口に、なんだか安心する。


ちなみに私たちは、星が綺麗と言っているから、愛を囁いた訳ではない。
あの時は、じゃあお互いアイラブユーをなんて訳す?となったが、残念ながら覚えていない。

あの時はなんて言ったっけ?と思いながら、よっしゃほな帰る準備しよかー!の掛け声に、起き上がらねば、と身体を起こすと、手が伸びてきた。
それは既に立ち上がっている幼馴染のもので、サンキュー!、You're Welcomeのやりとりで手を借りた。


片付けをしながら、また、手のひらを見つめる。
今度こそ転ばないようにしないと、と手のひらを握って、夜空を見上げる。

星はずっと、輝いていた。
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