• テキストサイズ

隣のトキヤくん

第9章 隣のトキヤくん⑨







「トッキーは、最近どうなの?」




そう言われて、野菜を切る手が一瞬止まる。



時は遡り食事の準備中。

内容がカレーだと知ると、味付けは任せろ、と食いしん坊が言う為、自分は包丁係に任命された。今、隣で人参を切っている、久しぶりに会う“自称兄”との会話で、そんな言葉が飛び出した。


どう...と言われても、言わんとしてる事は何となく察するが、すぐに続きを切り始める。


「...サークルは、とても良い雰囲気だと思いますよ」
「そう言って貰えるのはOBとして嬉しいけど!そーじゃなくて~」


わかってるクセにー!と、ハート型に切られた人参を手に、こちらに寄ってこようとする。
危ないからやめてください、アハハ、メンゴメンゴ~!と、いつもの調子で返される。全く...久しぶりに会ったと言うのに、何も変わっていない。それが彼の良い所なのでしょうが。




「大学でも、もうコンビ認定されてるみたいだし。お兄さんは2人が仲良しのままで、嬉しいよ~!」
「・・・」

トントントン...

「いやー、懐かしいねぇ。中学入る前だっけ?2人でお弁当屋来てくれた時『お兄ちゃんが好きです!』って、愛梨ちゃんが言うからびっくりしたんだけど、すかさずトッキーが『から揚げとお兄さん、どっちが好きですか?』って聞いたら『からあげ!』って答えてて!もう可愛くってさ~!」
「あぁ...」

トントントン...

「その後、何があったか覚えてる?」
「いえ...」

トントントン...

「そっかそっかー!トッキーがね『後で、からあげのつくり方、教えてください』って!」
「・・・」

トン.....トントン...



うーん!キュンキュンしちゃうよねぇ~!なんて言いながら、手はきちんとハートの人参を量産している。
彼の言わんとしている事を推測しながら、残りを切り終えると、野菜係ー!終わったらこっちにお願いしまーす!の呼び声。
はいはーい!と寿さんは切りそろえた野菜をボウルに入れる。自分も星型に揃えた人参を入れて、持っていく。

ルーを入れるだけであろう、味付け係の彼女が、「可愛い!」と、整えられた野菜をみて目を輝かせる。その反応に満足を覚えると、寿さんもニコニコしてこちらを見ている。
....訂正、ニヤニヤ、かもしれません。



/ 35ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp