第8章 隣のトキヤくん⑧
「あんなイケメンに、彼氏になって欲しいとかはないの?」
「えー、いや、特には...」
「好きになっちゃった!とかも?」
「ちっちゃい頃から一緒なんで、好きは好きだと思いますけど、恋愛かどうか...」
「じゃあ、あっちから付き合ってとか言われたりは!?」
「それはないです」
「今まで彼氏いた事は?」
「ありますけど、すぐ別れてますね」
「彼氏欲しくないの?」
「今のところ...」
「じゃあ、一ノ瀬くんと、寿先輩
2人に付き合ってって言われたら、どうするの?」
ピタッと、言葉が出なくなる。
「・・・なんで、寿先輩が」
「いや、3人とも幼なじみなんでしょ?」
三角関係とか、取り合いとかさー!確かに気になるー!と盛り上がる中、はいはい、これぐらいにして、夜の準備しよう、と副部長が遮ってくれた。
びっくりした。何が驚いたかって、びっくりした自分にだ。
そうか、私、幼馴染みって、言うと、“お兄ちゃん“のこと、だとは思わないのか。
どうしても真っ先に思い浮かんでしまう、眉間にシワが寄っているであろう彼の姿。
この違いは、何なのだろう。
すぐに答えられない問題を一旦しまって、モヤッとした気持ちを抱えたまま、準備へ向かう。
外はもう、星が出始めていた。