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隣のトキヤくん

第7章 隣のトキヤくん⑦




「面倒見が良いのは昔からなんだね」
「あだ名つけるのも昔からだったんだねー」
「そうなんです。だから、名前とは違う呼ばれ方するのも、慣れてます!」
「あー、そのあだ名、どうせ桐生院部長が付けたんでしょ?ごめんね、2人とも、うちの部長がこんなんで」
「聞き捨てあれへんなぁ!親しみを込めて、皆と仲良くなって欲しいっちゅう、可愛ええ呼び方やんか!」
「うんうん!仲良くなる第一歩だよねぇ。頑張り屋の部長さんなんだから!流石僕が見込んで、部長を継いで貰っただけはあるね!」
「変なとこまで引き継がなくても良かったのにね」


ドイヒー!!どういう意味やねん!!と、先輩方の漫才に場の空気は笑い一色だ。
私もアハハ~と笑いを返して、昔を懐かしむ。



昔は、本当によく一緒に居た。
ここで話題にするのは避けたが、私の初恋泥棒である。

お隣の彼にも、私、お兄ちゃんのこと、好きかもしれない!って伝えた事もあるのだが、ご飯くれるからって騙されちゃ駄目だよ、と幼い姿に似つかわしくないセリフを言っていたのを覚えている。マセガキめ。

多分、中学生位まで、憧れのお兄ちゃんだったんだと思う。
高校は別だったから、この想いがLoveなのかlikeなのは分からなかったけど、ちょっぴり甘い思い出だ。


思い出に耽っていると、こちらを見ていたのか、元マセガキと窓ガラス越しに目が合う。


『たのしいね』
『そうですね』

口パクでやり取りして、にひっと笑うと、まだまだ盛り上がる会話に集中する。
ずっとこの調子なのは疲れそうだけれども。それでも、大学生になってからの行事に、これから訪れるであろうワクワクとドキドキが消えないよう、お茶をもう1口飲む。



目的地はもうすぐだ。
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