第7章 隣のトキヤくん⑦
「血の繋がらない兄弟...そう、そこには涙無しでは語ることの出来ない、複雑なドラマが...!!」
「ただのご近所さんです」
「近所のお弁当屋のお兄ちゃんです」
「ネタバレ早くないかなー?」
僕ちん泣いちゃう!とふざけた調子で喋る姿は変わっていない。出身校だとは聞いていたが、まさかこのサークルのOBだったとは。
「いやぁ、まさか先輩とイチちゃん達が知り合いやったなんてなぁ!おもろい縁もあるもんや!」
「ほんとほんと~!まさかこのサークルに入ってくれてるなんてね~!あ、この時期はまだ正式じゃないか」
でも嬉しい!よろしくマッチョッチョ!
ワイワイと、どこでも中心になって楽しい雰囲気を作り上げる姿は、昔から変わっていない。懐かしいお兄ちゃんポジションの大先輩に笑顔が零れる。
「よっしゃ!ほな荷物乗せて皆乗り込むで!た~のしい夏の始まりやぁ!」
おー!
と、皆のノリに合わせて拳を上に突き上げる。
自分も負けじと手を上げるが、隣から手が上がらないのは想定内。
腰に手を当ててふぅ、と一息漏らす姿に、やれやれの感情が見えるが、決して表情は嫌がっていない。何だかんだで、楽しみにしてるんだなと、思うと、隣の彼と目が合う。
「...賑やかになりそうで」
「なによりだね!」
やれやれ。と口に出した彼に、笑い声を上げた。なんですか? いえ、別に!そんなやり取りも先輩方の数字コンビー!の声に中断された。夏の風が吹く。荷物を抱え直して一緒に歩き出した。