第6章 隣のトキヤくん⑥
「突然仲良くしてって!って言われても難しいじゃない?だから、はい、これどうぞ!」
と、副部長さんから、星をあしらったネームプレートが渡される。スタサマ中は付けててくれるかな?と、そこには既に名前と呼ばれる物が書かれていた。
ちなみに私のには“にーちゃん”と書かれている。ふむ、あだ名のが親しみやすいのであろう。いや、良いのだけど。とすると奴はイチ...うん。後でからかってやろう。
「勿論普通に呼んでもらっても大丈夫だし、私の事は副部長って言ってもらっても大丈夫だよ~。忘れ物あったら言ってね!」
優しい先輩だ。前お会いした時もよく喋る先輩の合間にお茶を出してくれたり、分かり辛いところを聞く前に説明してくれたり、さっきも頭バシバシされてた私を気遣ってくれたりと、スーパーフォローしてくれていたが、なるほど副部長さんだったのか。困ったことあったら、言ってね。と頼りになる姉御だ。
ブロロロ...
先輩のおかげもあってか中々楽しいお喋り時間も程なくして終わる。大きめの車が寄ってきた。バスとまでは言わないけれど、10人は乗れるであろう大きめの車だ。車種なんて分からないけど、なんだろう、旅館とかで、ちょっとした送迎に使われそうな。
駐車スペースに止まり、人が降りてきた。既に乗っていた人も何人かいて、そして運転席から降りてきた男性を見てあれ?となった。きっと幼馴染も同じことを思っただろう。
「朝早よぉからすんません!おおきにですわ!」
「ほんとだよぉ~、と言いたい所だけど、可愛い後輩達の為なら、僕チン頑張っちゃうよ~!お、これで全員かな?」
あれ?と、男性も私と幼馴染の姿を確認して、あれー!2人ともー!と声を上げている。注目をあびる私と幼馴染。知り合いなの?と言葉が耳に入る。
「知ってるも何も!あ、僕はOBなんだけど、お車担当で御一緒させて頂きまーす!んでんで、2人は僕ちんの弟と妹かな。よろしくマッチョッチョ!」
ウィンクをバチンと、皆の視線を集めるあの姿は変わってないなぁ。ちょっと離れた場所の彼がふぅと、ため息混じりっぽい。数秒の沈黙と、先輩達の視線が行ったり来たりした後、えぇええ!?の大合唱。
ミーン!!ミーン!!
蝉が楽しい夏をお知らせしてる。