第5章 隣のトキヤくん⑤
「それってレディに対する愛だよね?」
新しいオモチャを見つけたと言わんばかりのにやけ顔で、彼は告げた。
大学に入ってからの知り合いで、私と同じ学部生の彼はとても女性に人気がある。何の因果か、ちょくちょく私に話かけてきて、次第に一緒にいる回数が増えてきた。短い付き合いだが、中々人の懐を探るのが上手い。
自分も、彼に通じるものを感じているからか、まぁ仲の良い部類になるのかもしれない。どこか達観している彼に、ついポロっと話をしてしまったら、返事がこれだ。
「...何を言ってるんですか」
「別に変な意味じゃないよ。男女感の友情もありだと思うしね。俺からしてみれば羨ましい話だよ?」
その笑顔に裏があるように感じてしまう。
折角なので、やはり例のものは新調しようと出かける準備をし、家を出たら彼がいた。
何故居るんですか?と聞けば、やだなー夏休みの間に遊びに行こうって話したよね?と返されてしまい、私の周りには自由奔放な人しか居ないのでしょうか...とゲンナリするが、あれよあれよと一緒に買い物に行くことに。
車で来たんだ。ランチはどこが良い?オススメの場所あるよ。買い物ならあそこだね。行きたい所あったらそっちに行こう。嫌いなものある?ここなら気に入ると思うんだ。暑くない?寒かったらひざ掛け使ってね。
『...失礼ですが、ご兄妹は?』
『上がいるよ。どうかした?』
いえ...と、言葉を濁す。そう?と気にした様子も無く、車を走らせるその横顔は、確かに人気がある訳だ...と納得してしまう。これも彼の魅力の一部に過ぎないのだろうと、窓の外を眺める。