第5章 隣のトキヤくん⑤
『よろしくお願いします』
ピロン
もう返信が、と届いた通知からメッセージを開くと、それはいつもの彼女で『さっき先輩に送った!』とのご報告。
『こちらもです。返事ありましたか?』
『スタンプきたー!こんなの』
ピロン
と、送られて来たのは関西弁で喋る熊。随分デフォルメされていて、よろしゅー!と文字がキラキラになっている。
熊と言えば星座の中にもその名前があったはず。合宿時に見れるかもしれないですね。と、行くと決めると楽しみが出てくる。
星は好きです。幼い頃、初めて家族でプラネタリウムに行った時、余りにも綺麗で、あの星の輝きを隣の幼馴染にも見せたくて、2人で夜中にこっそり家を出た事もある。生憎の曇り空で、星はほとんど見えず、互いの両親にこっぴどく叱られただけだったが。
懐かしい思い出だ。
ピロン
『おおきに!そしたら、準備するものとスケジュール送るで、聞きたいことあったらなんぼでも言うてや!』
続けてファイルが届く。中身を確認し、お礼の文章を送って、ベッドに腰掛ける。既読が付くが、返事はないだろう、やり取りを終えて一息つく。
心配だった隣人のテストも、持ち前の前向きさでクリアしたようだし、大学での初めての夏休みは、さてどうしようかと考えたもの。とりあえずはサークルの予定が先か、とファイルの中をもう一度確認する。
着替え、虫除けスプレー、貴重品の管理など、注意事項が書かれているが、とある単語に視線が止まる。
‘’ ☆水着持参(もしくは濡れても良い格好 ‘’
川遊びでもするのであろうか。無くはないが、モノは実家な上、ここ何年も着てはいない。折角なので新調すべきか、焼けないよう控えるか、頭を悩ませる。余り娯楽的な買い物に悩みはしない派だが、こう考える分には中々楽しみにしているようだ。珍しい自分の気持ちにクスッと笑う。