第4章 隣のトキヤくん④
ほなー!と嵐が去っていった。ふぅ、と一息つく隣人さんに、テストお疲れ~と声をかけると、テスト...よりも疲れたかもしれません。と珍しい事を言っている。アハハ、あ、そうだ。とまだ冷たい缶ジュースを渡す。
「ありがとうございます」
「あぁ、それ私じゃないの。先輩が」
「・・・なるほど、それで」
と、彼が見つめるのはブラックの缶。ちなみに私にはコーヒー牛乳のパックだ。私が渡すなら、頭を使ったらちょっとでも甘いものだと、微糖にする。先輩の前では無糖で飲んでいたはずなのでそれを覚えていたのだろう、よく見ているなぁ。「頂きます」プシュと音が鳴る。
「こっち飲む?」
「大丈夫です」
「そ」
「後は午後と明日でしたか」
「イェース。ってことでお疲れの所すいませんが、追い込みお願いします!」
「Yes。発音が甘い」
「い、 Yes」
「そう、先程のもVとBで聞き苦しいです」
「サマバケ?」
「スタサマでしょう」
「・・・やっぱり飲む?」
「続きやりますよ」
うーん、先輩とは大違いだなぁ、と改めて感じながら、大分温くなったコーヒー牛乳をズコッと飲み干す「音を立てない」...こっちもオカンだった。やばい、Wオカンだ。面白くなってしまったじゃないか。テストに集中出来なかったらどうしてくれよう。しかし、それではせっかく教えてくれたお2人に悪すぎる。いかんいかん。
「こちらは教わったのですか?」
「うん、さっきここだよーって」
「そうですか...」
「...こっちは自信ない」
「あぁ、それは...」
やはり彼も教えるのは上手だ。と言うか、私が分からないことを良く分かっているのだろう。専用の教師みたいだ。家庭教師。
今日は2人もセンセイが付いてくれたのだ、頑張らねば。うん。オカンもいるし。
家庭教師とオカン両方...
家庭教師のオカンが...
W家庭教師のオカンが...
...ダメだ。ほんとにテスト心配になってきた。
「ごめん、ちょっと頭叩いてくれる?」
「は?」
テストまで後1時間。罪のない先輩を呪いながら、紙パックを握り潰してゴミ箱に入れる。それからの私は集中の鬼となり、無事にテストを乗り越えるのだが、先のお話。