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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第8章 「この夜だけは、嘘をついて」


……でも、それだけじゃない。


(……私は、諦めようとしてた)

(あの時――“もういい”って、自分の口で言ったのに)

(先生は、それでも……)


の視線が、そっと五条の横顔をとらえる。


自分を怒鳴り、引き戻してくれた手の熱が、まだ指に残っている気がした。


(……ひとりで勝手に諦めて、勝手に終わらせようとしてた)

(先生が、こんなにも――本気で、私を生かそうとしてるのに)


その思いが、胸の奥で何かを弾いた。
ゆっくりと、けれど確かに。


は、ゆっくりと息を吸い、吐いた。
そして、顔を上げた。



「……私だって、望んで器になったわけじゃありません」



声は震えているのに、不思議と揺らがない。



「ずっと……この力のせいで、周りから変な目で見られてきました。    
怖がられて、避けられて……。こんな力、なければいいって、ずっと思ってた」




唇が、わずかに噛みしめられる。



「でも……もし、この力が、誰かの役に立つものだったとしたら。もし……まだ、ここで果たせる“何か”があるのだとしたら――」



目の奥に灯るものが、確かな熱を帯びていく。



「私……まだ、何もできてないんです。だから――」

「何も知らないまま、黙って処刑されるなんて……そんなの、まっぴらごめんです!」



まるで、自分の言葉が場の空気を切り裂くようだった。
は視線を逸らさず、真正面から夜蛾を見据えた。
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