• テキストサイズ

【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第8章 「この夜だけは、嘘をついて」


は視線を落とし、膝の上で指先をぎゅっと握りしめた。
唇の端に貼られた小さな絆創膏が、妙に重く感じる。



「……ありがとうございます」



声はかすれていたが、それでも硝子は穏やかにうなずいた。



「何か飲むか?」



そう言って、硝子は立ち上がり、給湯器のスイッチを押した。
ポコポコとお湯が沸く音が、静かな医務室に広がっていく。


はその背中を見つめながら、少し迷ってから口を開いた。



「……硝子さんと五条先生って、同級生なんですよね?」



硝子はティーバッグをカップに落としながら、片眉を上げた。



「ああ、そうだけど……それが?」

「い、いえ……」



慌てて言葉を濁す。


硝子は小さくため息をつき、紅茶の香りを立ちのぼらせながらカップを差し出す。



「……言いづらいことか?」



湯気の向こうで視線が交わる。
は唇をもごもご動かし、ついに決心したように息を吸い込む。


硝子が自分の紅茶を一口啜った、その瞬間――



「ご、ごじょ……五条先生って……キ、キスが好きなんですか?」



ぶふっ、と硝子は盛大に吹き出した。
咳き込みながら肩を震わせる。



「……はぁ? なんでそんなこと聞くんだ」

「いや、あの……」



は耳まで赤く染め、言葉を探すように視線を泳がせる。


硝子は目を細め、探るように問いかけた。



「……もしかして、五条と何かあったのか?」



はぶんぶんと両手を振った。



「ち、ちが……そういうんじゃなくて……でも、なんていうか……!」



硝子は半眼になり、唇の端をわずかに上げた。




「じゃあ、なんでそんな真っ赤になってるんだ」

「な、なってませんっ!」



耳まで熱くなっているのを自覚しながらも、必死に視線を逸らす。


硝子は紅茶をもう一口啜り、あえて追及をやめた。



「……ま、いいけど」



カップの湯気を眺めながら、ぽつりと続ける。



「五条がキス好きかどうかなんて知らん。……あいつの性癖なんて、知りたくもないからな」



ふっと鼻で笑い、カップをソーサーに戻す。



「軽薄で、自己中で、正真正銘のクズだけど」
/ 442ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp